2015年 理工学部 シラバス - 海洋建築工学科
設置情報
科目名 |
海洋学Ⅰ
地球と海を知る
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設置学科 | 海洋建築工学科 | 学年 | 1年 |
担当者 | 小林 昭男 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 月曜2 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | D12B |
クラス |
概要
学修到達目標 | 学習目標は海洋学における地学,化学,物理学の基礎事項の理解である.地学分野では地震動,海岸付近の地形地質,海底資源の理解に必要な地球の構造,地表の動きと様子を学習する.化学分野では海水の動態,水質環境,生物環境の理解に必要な海水の性質を学習する.物理学分野では海水の動態の理解に必要な大気と海洋の動きを学修する. |
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授業形態及び 授業方法 |
授業(90分)は,毎回,20分あるいは30分間の学習ユニットで構成される.1つ学習ユニットの構成と所要時間の目安は,スライドを使用した解説(5分),教科書を使用した補足説明(10~15分),チェックテスト(5~10分)である. |
履修条件 | 特になし |
授業計画
第1回 | ガイダンス 海洋学の発展:海洋環境の理解は,海洋における私たちの快適で安全な活動や資源利用の考案に不可欠である.そのためには海洋の全体像の理解すなわち海洋学の学習が必要である.初回は海洋学で学ぶこと,海洋の科学的な海洋学の歴史,現在と未来の海洋学を学修し,本科目の全容を展望する.また,授業の進め方や効果的な学修方法を解説する. |
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第2回 | 水の惑星A:原始地球は高温で溶融しており密度の高い鉄やニッケルは重力の影響で中心部に集まり核を形成し,アルミニウムやケイ素のような軽い物質は地表まで上昇して地殻を形成し,その下にはそれより密度の高いマントルの層が形成された.地球は,地核,マントル,地殻の3層構造になった.今後に学習するプレートテクトニクスを理解するためには,この3層構造の知識が必要である.さて,3層構造の形成過程でガスが噴出して地表面に蓄積されて大気や水が作られ,地球は水と大気で覆われた.地球上の水の97%は海洋に存在し,海洋は地表の70%を覆っている.この海洋の底の地形は,大陸縁辺部,深海盆,中央海嶺に区分されている.海底地形の区分は,海洋底の起源を議論するために必要な重要事項である. |
第3回 | 水の惑星B:全地表面の高度を測定してその分布図を描くと,陸地の平均高さと海底の平均深度の周辺周りでピークが現れる.この2つのピークをもつ分布,即ちバイモーダルから大陸と海底の地殻を構成する物質は異なることが想起され,事実,海洋性地殻は玄武岩,大陸性地殻は花崗岩によって特徴づけられ,玄武岩は花崗岩よりも密度が大きい.どちらの地殻もそれらよりもさらに密度の高いマントルの上に浮かんでいる.この事実から,海洋性地殻と大陸性地殻の厚さを考察する.さらに,海底地形や地層の計測方法を学ぶ.これは海洋プレートテクにクスを理解するために重要な知識である. |
第4回 | 海盆の起源A:大陸移動説は2~3億年前までは一つであった大陸が,その後に分裂・移動して現在の地形に至ったという説である.これは地球儀の大陸の辺々の形状が似ており,ジグソーパズルのように組み合わせられることから想起された説である.この大陸移動が生じた理由は,大陸に亀裂が生じ大陸間にできた海洋底が拡大したためであり,亀裂が生じて拡大する場所が中央海嶺である.中央海嶺では地殻が引き裂かれて下から溶融した玄武岩が噴出して新たな地殻が形成される.海洋底は現在も拡大していることが知られている.海洋底拡大を考察して,海底地形の形成過程を知るための基礎知識を学ぶ. |
第5回 | 海盆の起源B:海洋底が拡大し続けると玄武岩の噴出によって地表が大きくなり,地球の直径も大きくなるはずであるが,そのようなことは生じていない.その代わりに海洋性地殻は消滅する場所がある.これが海溝であり,大陸性地殻と海洋性地殻が衝突している場所であるため,大きな変動が生じる.これらの変動が生じる場所が地震の震源である.中央海嶺と海溝で縁取られた地表の部分をプレートと考えると,地表は数枚のプレートで覆われていることになる.このプレートの移動を説明した理論がプレートテクトニクスである.プレートの移動を考察して,海洋底の形成や地震の要因を学ぶ. |
第6回 | 海洋の堆積物A:プレートの移動によって形成された大洋底は堆積物で覆われてきた.堆積物の層は,大陸上の岩石の侵食による粒子や生物の死骸の沈殿物で構成されている.氷河期と間氷期の繰り返しにより海面の前進と後退が繰り返され,侵食された岩石の粒子は堆積して海洋性の堆積岩となった.現在は海面が低下しているので,私たちは海岸で海洋性の堆積岸の露頭を見ることができる.堆積物の成因を知ることで地球上の過去に起きたことを知ることができる.さらに現在も進行する侵食作用と堆積作用の今後を推測するための材料にもなる.そこで,堆積作用をコントロール要因と大陸棚の堆積物を学ぶ. |
第7回 | 海洋の堆積物B:深海底では,大陸棚の浅瀬から運搬されてくる砂泥の陸源堆積物と微生物の死骸や殻が堆積する.この堆積過程は,バルク・エンプレイスメント,遠洋性堆積物,海水源堆積物に分けることができる.バルク・エンプレイスメントは陸棚から大量の土砂の塊が崩落した堆積物,遠洋性堆積物は海水に縣濁した土粒子や生物起源の粒子がゆっくりと沈降した堆積物,海水源堆積物は海底起源の堆積物でマンガン・ノジュールが一例である.堆積物を知ることは海底資源の分布を知る手がかりなる.さらには,気候変動による環境変化のプロセスを予測するためのデータにもなる.そこで,深海底の堆積物を学習する. |
第8回 | 海洋地学分野の理解度確認 |
第9回 | 海水の性質A:海水の主成分は水であり,水を溶媒とした6つの主な溶質は塩化物,ナトリウム,硫酸,マグネシウム,カルシウム,カリウムの各イオンである.このうち,塩化物イオンとナトリウムイオンは化学的に結合して塩となるので,海水は塩辛いのである.このほかに5つの溶質がありこれらも生物環境に重要である.これらが1㎏の海水中に溶けているグラム重量を塩分と呼ぶ.塩分は海域によって異なるが構成イオンの比率は一定である.したがって,どれか一つのイオンの重量が分かれば塩分を知ることができる.海洋の循環や生物の理解するためには海水の基礎知識として,海水の塩分,その成因と調節機能,海水の性質に対する塩分の影響を学習する. |
第10回 | 海水の性質B:海水の動きに影響を与える性質として,塩分の他に温度や密度がある.これらは深度や海域によって異なることが知られている.南北の海域では表層の海水の温度は気温の影響を受けて寒暖の差がある.深度方向には躍層がありその下方は一定の4℃程度になる.塩分にも密度にも躍層がある.これは表層の状況は季節や海域ごとに変わるが,深層ではほぼ一定であるために生じる水深方向の状況変化である.これらは,表層の暖かい海水は寒冷の海域に移動し,冷却による密度増加によって沈降する海水の動きに関係している.海水中の気体も重要な性質であり,特に生物には直接的に関係する.ここまでの学習成果により,海洋と陸域との物質循環を説明できるようになる. |
第11回 | 大気と海洋の循環A:大気と海洋はエネルギーや物質を交換し相互に影響を及ぼしている.大気は温度の変化により上昇下降し,地表面に低圧帯と高圧帯を形成して風が発生し大気の循環が生じる.このような循環は,赤道,北(南)緯30度,北(南)緯50度を境にして南北半球に3つ存在する.この循環で吹いているのが貿易風,偏西風,極偏東風である.この大気の流れが海洋の表層を駆動し,海面の摩擦,圧力傾度,コリオリ偏向の相互作用によって表層の風成循環を形成している.これらの学習により表層の海流の成因を理解することができる. |
第12回 | 大気と海洋の循環B:風成循環は海洋の表面に限られているが,深層でも循環が生じている.その駆動力は水温と塩分によって生じる密度の違いであり熱塩循環と呼ばれる.赤道から南北緯45度の範囲では蒸発が盛んで塩分は高くなるが水温は高いために密度は小さくなり表層に留まる.この水塊が南北緯45度を超える範囲の流れると気温の影響を受けて密度を増して深層へ流れる.深層の流れは密度の違う水塊と遭遇・混合して再び海面に現れる.これを海洋大循環と呼びそのサイクルは1000年といわれている.ここまでの学習で海水の循環は気候と大きく関係していること,地球温暖化は熱塩循環を弱める可能性があることが理解され,今後の気候変動やそれによって生じる現象の考察が可能になる. |
第13回 | 海の資源:海洋生物学は未だ学習していないが,生物資源が豊富であることを私たちは知っている.また,砂礫,石油とガス,ガスハイドレート,マンガン・ノジュール,コバルト・リッチ・クラスト,リン酸塩堆積物などの有用な資源も豊富である.さらに岩塩が乏しい国では海水中の溶存物質としての塩は重要である.海洋開発や資源保護の議論を可能にするために, これらの資源の分布と採取方法を学習する. |
第14回 | 海洋における人間の存在:人間は海洋を多様な目的で利用している.海洋資源利用のための海底掘削は海水汚濁や油漏れの原因になる.都市排水・工業排水は終末処理がなされる場合もあるが,直接,海に廃棄する場合も多い.生物資源利用では,乱獲による種の絶滅が起きている.空間利用では物流やリゾート開発のために港湾やマリーナの建設が行われ,海岸侵食が生じてウミガメの産卵や浅海生物の生息環境を奪っている.人間は周囲のすべてを都合よく利用してきたが,持続的に再生可能な海洋資源を利用し,環境影響を最小にする必要がある.この講座で学習したことの総括としてこの問題を議論しよう. |
第15回 | 海洋化学分野の理解度確認 |
その他
教科書 |
東京大学海洋研究所監訳 『海洋学』 東海大学出版会 2010年 第1版
教科書は必ず購入しましょう。海洋学Ⅱでも使用します。
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参考書 |
谷合稔 『地球科学入門』 ソフトバンククリエイティブ(株) 2012年 第1版
日本海洋学会 編 『海はめぐる』 地人書館 2012年 第1版
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成績評価の方法 及び基準 |
毎回の理解度確認チェック15点,理解度確認10点×2回,期末テスト65点 |
質問への対応 | 随時 |
研究室又は 連絡先 |
13号館6階1362号 沿岸域工学研究室 kobayashi.akio@*** |
オフィスアワー |
火曜 船橋 15:00 ~ 18:00
水曜 船橋 15:00 ~ 18:00
木曜 船橋 15:00 ~ 18:00
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学生への メッセージ |
海洋環境を理解するうえで重要な基礎事項を演習を交えて学習します.楽しみながら学習しましょう. |