2015年 理工学部 シラバス - 教養教育・外国語・保健体育・共通基礎
設置情報
科目名 |
倫理学
犯罪と刑罰から考える倫理学
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設置学科 | 一般教育 | 学年 | 1年 |
担当者 | 佐々木 慎吾 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 水曜3 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | R33W |
クラス |
概要
学修到達目標 | 倫理学は、われわれがつねに「他者と共に在る=人と人の間に在る」こと、言い換えれば「人間」であることの実相を問い直し、その在り方について反省する学問であると言える。したがって、われわれの日常のいたるところに倫理学への通路が開かれている。 通常の倫理学的方法論では、誰もが当たり前のものとして受け入れている「日常性」の場面を出発点として設定することが多い。しかしこの授業では、あえて「犯罪」「刑罰」という、極めて非日常的とも言える場面から出発し、そこから、日常性において見過ごされているかもしれない倫理学的諸問題を逆照射することを試みたい。。 折しも、裁判員制度の導入によって、犯罪や刑罰というものを自分自身の問題として引き受けることが、われわれ一人一人に求められている。「人を裁く」ということが、どこか遠い世界の話ではなく、のっぴきならない現実として突きつけられていると言ってよいだろう。 こうした観点から、近年とりわけ再評価が進むカントやヘーゲルの刑罰論、社会システム理論(ルーマン)の刑法学への応用であるヤコブスの「敵対刑法」論などについて議論するとともに、場合に応じて、リスク社会論や街頭監視をめぐる諸問題など、今日的な動向についても触れつつ、現代社会における「刑罰の倫理学(Penal Ehics)」の可能性を考えてみたい。 倫理学の基本的な概念についての理解を与えるとともに、それらを現代的な課題として捉えるための視座を提供することを目指す。 |
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授業形態及び 授業方法 |
講義と板書が中心ですが、必要に応じてプリントを配布します。 |
履修条件 | 予備知識は特に必要ありません。 |
授業計画
第1回 | 刑罰をめぐる今日の状況 「厳罰化」と「早期化」 倫理学の方法論について。「刑罰・犯罪」が、なぜ倫理学の課題となるのか。 |
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第2回 | 古代の刑罰観(ギリシャ、日本)とその影響―『オイディプス王』『古事記』を題材として、応報と復讐、「ケガレ」の思想について考える。 |
第3回 | 共同体と犯罪 アウトロー(法‐外なる者)としての「他者」 排除と包摂の論理について |
第4回 | 啓蒙思想・社会契約説の刑罰論(グロティウス、ホッブズなど) 「国家による刑罰」の根拠について。「啓蒙」とは何か? |
第5回 | カント(1) カント法論の現代的意義とは? 応報刑の哲学的根拠づけについて。 「定言命法」「人格と物の区別」など、カント道徳哲学を概観するとともに、その現代的な意義につて解説する。 |
第6回 | カント(2) 第五回の続き |
第7回 | ヘーゲル(1) 市民社会と相互承認、法の「自己回復」としての刑罰 ヘーゲル哲学の思考法(弁証法)について概観するとともに、市民社会の哲学としての「法哲学」における犯罪論・刑罰論について解説する。 |
第8回 | ヘーゲル(2) 第七回の続き |
第9回 | 現代における刑罰観・犯罪観の転換―応報から教育へ ※実例トピックの検討(街頭監視・非拘禁的処遇の倫理学的問題など) |
第10回 | ヤコブスの「敵対刑法」論(1) 社会システム理論から刑罰を捉える 人格の相互承認か、「敵」との闘争か? |
第11回 | ヤコブスの「敵対刑法」論(2) 第十回の続き 現代に甦るヘーゲル法哲学? |
第12回 | リスク社会における「他者」の変容 ルーマンのリスク論・規範論 抗事実的予期としての「法」。社会システム理論について概説するとともに、「予期」に基づく規範理論について解説する。 |
第13回 | 自由と安心のトレード・オフ? 「他者を信頼すること」とそのリスク。12回の内容を踏まえ、システム理論における「信頼」の位置づけについて、和辻倫理学などにも言及して解説する。 |
第14回 | まとめ Penal Ethicsの射程と可能性―「人を罰すること」の倫理とは? |
第15回 | 理解度確認テストおよび解説 |
その他
教科書 |
教科書は特に指定しません。
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参考書 |
参考書は、必要に応じて紹介します。
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成績評価の方法 及び基準 |
理解度確認期間中に行うテスト(60%)、不定期に行う小テスト(20%)、課題図書についてのレポート(20%、テスト日に提出)の合計で評価します。 テストでは、人名や用語・概念といった授業内容の理解の他、自分の考えが論理的に表現できているかどうかという点も評価の対象とします。また、小テストの提出回数が全体の半数に満たない場合、出席不良と見なして、本試験の受験を認めません。 なお、私語や携帯電話の使用といった、授業の妨げとなる行為については、成績判定や単位認定上、特に厳しく取り扱うから、十分に注意して下さい。 |
質問への対応 | 授業中、授業後など、いつでも質問を受け付けます。 |
研究室又は 連絡先 |
初回授業にて伝えます。 |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
「倫理学」というものに皆さんがいだくイメージはさまざまでしょう。ひょっとしたら、「退屈なお説教」「現実離れした空論」という先入観を持つ人もいるかもしれません。そのような人はむしろ大歓迎です。良い意味で、期待を裏切る授業を目指しています。人間や社会に対する貪欲な好奇心を持つ皆さんの参加を大いに期待します。 |