2015年 大学院理工学研究科 シラバス - 建築学専攻
設置情報
科目名 | 地震工学特論 | ||
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設置学科 | 建築学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 宮村 正光 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 月曜2 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | C12B |
クラス |
概要
学修到達目標 | 授業は3部構成で、以下の学習目標を習得する 第一部:地震・地震工学の基礎知識の習得:地震発生のメカニズム、地震動の分析法、入力地震動の考え方から構造物の応答まで耐震設計に必要な各要素技術を習得する。 第2部:耐震設計の流れと地震被害の教訓:原子力発電所、超高層ビルなど重要構造物や特殊架構の大型構造物の耐震解析を通して、耐震設計の基本的な手法と実際のプロセスを理解する。過去の大地震や最近の被害事例を考察して、種々の教訓を学ぶ。 第3部:地震工学の新たな方向:個々の建物の安全から都市防災の問題まで、災害リスクマネジメントの考え方を軸に新たな地震工学の方向性を探る。特に社会工学的な視点から面的な被害推定や、事業継続計画(BCP)への展開など危機管理の考え方を学び、実効的な防災エンジニアリングのあり方、有効な対策を考える。 |
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授業形態及び 授業方法 |
1:理論の詳細な内容よりも基本的な考え方やしくみ、研究開発成果の実務への展開方法に主眼を置く。 2:現場、研究所などの見学や実務者との意見交換を通して企業における研究開発の実際や、建物が建設される実際のプロセスを理解する。 3:地震工学をコアにした関連技術を紹介し、興味、関心のあるテーマを探索する。 4:ビデオ、スライドなどの教材を使用し、わかりやすい内容紹介を心がける。 5:関心のあるテーマについては対話によるコミュニケーションを図る。 6:講義内容の資料の一部を配布。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
構造力学などの基礎知識があれば、馴染み易いかもしれませんが、地震工学の知識の習得に関心があり、地震被害の低減に向けて、新たな気持ちで取り組もうとする意欲があれば、ぜひ受講して下さい。 |
授業計画
第1回 | 第一回:講義の全体概要 地震の発生、地震動の評価から都市の安全まで耐震設計の一連の流れを紹介する。地震の発生から耐震設計の流れに沿って各段階で考慮すべき重要な要素や考え方等、3部構成となる授業内容の概要と最新の国際的な研究動向を紹介 |
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第2回 | 第二回:地震を知る 工学の視点から必要となる地震学の基本的な内容を理解する。地震学と発生のメカニズム、 地震学発展の歴史、欧米の研究者と日本の地震学、内陸地殻内地震、プレート境界地震など地震のタイプと発生のメカニズムの相異、活断層の種類と特徴、地震の規模と発生頻度の関係、連動地震 |
第3回 | 第三回:地震学の知見を工学の利用に展開する 地震学の知見がどのように工学に利用されるかを学ぶ。大地震の起こる場所、米国、ヨーロッパにおける地震の発生頻度、歴史地震の分布、地域的な特性、震度分布を利用した地震危険度(ハザード)評価の考え方、確率論的な評価手法の概要、地震動の予測地図など |
第4回 | 第四回:地震動の性質を知る 地震動の観測方法と分析手法を理解する。地震計の原理、地震動の強さを表現する主な指標、震度、継続時間、周波数特性、最大振幅、波動理論、成層地盤、不整形性の影響、地盤条件と観測される地震動の特徴、長周期地震動の性質、種々のスペクトル等、ランダム変動を分析する基本的な手法、目的に応じた解析ツールの選択と主な特徴、高密度の地震観測網、震源近傍の観測記録の特徴、最大振幅と距離減衰 |
第5回 | 第五回:設計用入力地震動の考え方と模擬地震波の作成手法を理解する 耐震設計に用いられる入力地震動の評価方法を理解する。耐震性能の評価、耐震基準の変遷,確率論、シナリオ型アプローチ、2方向入力、構造物に加わる地震力の評価、設計用応答スペクトル、水平動と上下動、スペクトルに適合する模擬地震波形、調和関数型モデル、既往波を用いた波形の作成法、断層モデルによる理論波形、種々の地震動予測の手法と実建物への適用法 |
第6回 | 第六回:特殊構造物の耐震設計の方法を学ぶ(その1:原子力発電施設) 最も厳しい耐震基準の原子力施設の耐震設計の考え方を理解する。各施設の重要度分類と設計クライテリア、減衰、剛性の評価、振動解析モデルの作成、耐震解析手法、地盤と建屋の相互作用、建屋と内部機器の応答性状、東北地方太平洋沖地震を踏まえた審査指針の見直しと今後の動向、活断層の再評価、津波対策 |
第7回 | 第七回:特殊構造物の耐震設計の方法を学ぶ(その2:超高層ビルと大架構建物) 超高層ビル、博物館、火力発電所など大型特殊構造物の耐震解析の実例を一般建物と比較して紹介、超高層ビルの耐震設計法、長周期地震動への対策、揺れの継続時間、大スパンなど特徴的な架構形式と振動性状、揺れの軽減策、免震、制震技術の考え方と実建物への適用方法 |
第8回 | 第八回:地震被害の要因を分析し、教訓を学ぶ 東北地方太平洋沖地震や兵庫県南部地震をはじめ、メキシコ地震、台湾地震、北海道南西沖、宮城県沖、新潟中越地震等の国内外の大地震の被害要因を分析し、現地調査結果から得られた教訓を学ぶ。構造種別ごとの損壊のパターン、崩壊する要因、柱、梁など構造体と設備機器や天井など2次部材の損傷評価、被害連関図による被害の直接、間接的な要因の分析、被害の全体像や固有の事象の把握方法、短中期的な影響の評価 |
第9回 | 第九回:地震工学の新たな展開を図る(1)地域の防災力と回復力を高める 都市防災の考え方、都市のぜい弱性の評価、社会工学的なアプローチ、面的な被害予測の方法、都市に広がる種々の構造物、社会基盤とライフライン、時系列に沿った効果的な対策、地理情報システム(GIS)の適用法、地域特性と災害ポテンシャルの評価 |
第10回 | 第十回:地震工学の新たな展開を図る(2)リスク認識と企業の防災戦略(BCPとBCM) 安全・安心の考え方、事業継続計画・管理(BCP・BCM)の考え方、重要業務の特定とリスク分析、費用対効果、日本人固有のリスク認識と災害観、防災投資を阻害する種々の要因分析、社会ニーズに対応した総合的な地震防災システムの構築、事前から事後の時系列に沿った有効な対策、企業の復旧戦略と防災対策 |
第11回 | 第十一回:地震工学の新たな展開を図る(3)リスクマネジメントへの展開 企業を取り巻くリスクの種類と評価の方法、建物、人命、ライフラインなどの被害想定手法、リスコントロール、確率論的な損失額の評価(PML)、リスクカーブの考え方、耐震診断、目的に応じた補強技術、居ながら補強、制震補強 |
第12回 | 第十二回:地震工学の新たな方向を探る(4)地震予知とリアルタイム地震防災システム 地震予知の現状と課題、ソフト、ハード両面からの防災対策、地震情報の直前検知と情報伝達、日米で研究・開発中の最新の防災・減災技術、制震、免震技術の活用、直前情報と地震予知の問題、緊急地震情報の概要と適用事例、直下型地震への対応,オンサイト警報システムの考え方、モニタリングシステム |
第13回 | 第十三回:民間企業の研究所見学 建設会社の研究所の実験施設などを見学し、最新の研究動向を学び、研究員との意見交換を通して、実際の研究が実務にどのように生かされているかを習得する。 |
第14回 | 第十四回:建設現場の見学 施工中の現場の見学や、施工担当者との意見交換を通して、建設現場の実際を体験する。 |
第15回 | 第十五回:課題の提出と解説 理解度を確認するため、提出された課題の趣旨を解説し、各課題の回答内容について個別に討議を通して、重要なポイントや考え方を説明する。 |
その他
教科書 | |
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
講義で使用する参考文献、関連資料は毎回配布する資料の中に記載し、必要なものは原文を配布する。
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成績評価の方法 及び基準 |
授業への参加意欲と、提出された課題やレポートの内容が、要求する基準に沿ったものであるか否かを判断し、評価する。 |
質問への対応 | 授業内容に直接関係しなくても質問があれば、授業中の他、メール、電話などでも対応する。 |
研究室又は 連絡先 |
連絡先メール:miyamura@cc.kogakuin. ac.jp 電話:042-628-4739 (八王子校舎 直通) |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
阪神大震災や東日本大震災を踏まえて地震工学も見直しと新たな展開が求められています。単に建物を地震災害から守るだけでなく、あらゆる災害・リスクから人々を守る安全・安心な街つくりを目指す総合的な視点とリスク軽減対策が必要です。地震工学の知見をコアに、企業が求める具体的なニーズを理解し、必要となる地震工学の基礎知識や最新技術を習得を目指し、建設市場や企業の多様なニーズに応えられるよう支援します。 |