2015年 大学院理工学研究科 シラバス - 建築学専攻
設置情報
科目名 |
建築計画特論Ⅱ
社会的に平等な生活環境を実現するためには
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設置学科 | 建築学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 八藤後 猛 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 火曜4 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | C24C |
クラス |
概要
学修到達目標 | 近代における平等思想「ノーマライゼーション」は、人類の普遍的な平等を権利としてうた ったものである。ノーマライゼーションの実現のためには、私たちをとりまく、まちや建築物は、高齢者や障害者はもちろん、子ども、妊婦、また住宅困窮者などを含む全ての人々にとって平等な利用環境である必要がある。 本講義は、この思想を建築学をはじめとした工学分野の立場から実現していくための方策を探求するものである。そのために、高齢者や障害者などの身体特性・行動特性の基本を習得する。そのうえで、住宅・公共建築物・社会福祉施設・交通機関などの法制度に基づく各種の生活空間の建築計画のあり方について考究する。また、こうした人々を対象とした設計や研究方法についても言及する。 |
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授業形態及び 授業方法 |
講義形式によりすすめる。 また、独自の資料を配付して、それを解説する。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
特に求めない。 日本大学理工学部建築学科で開講していた設計計画I、ならびに建築人間工学を受講していると、いっそう理解が深まる |
授業計画
第1回 | 建築物やまちづくりにおける「平等」とはなにか 正義とは、社会における人々の「平等」のことである それを実現するための生活環境整備に設計者にはどのような範囲の社会的責務があるか 裁判事例と設計者に求められる危険予知能力と平等のための技術的性能 |
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第2回 | ノーマライゼーションと建築環境 その1 1960年代、北欧で始まったノーマライゼーション思想について、わが国や欧米諸国、そしてアジアの国々はどのように対応してきたか ノーマライゼーションをテーマとして「障害」と「環境」との関係をどのように捉えてきていたか わが国のバリアフリー法は、どのような経過をたどってできあがったか、今後どうなるか |
第3回 | ノーマライゼーションと建築環境 その2 国連障害分類の変遷と、障害者権利条約がわが国の建築設計等にもたらすもの わが国が署名した国連の「障害者権利条約」における平等を実現する「合理的配慮」とはなにか、建築やまちにおいて、個人の要求はどこまで反映すべきか |
第4回 | ノーマライゼーションと建築環境 その3 指針や設計標準、規格のディテールは、どのようにして決定していったか ノーマライゼーションに関する建築学会の対応と今後 |
第5回 | あらためてユニバーサル・デザインを考える1 ユニバーサル・デザインは人々にどのように解釈されてきたか それぞれの「ユニバーサル・デザイン論」を解明し、設計者へのメッセージを読み取る |
第6回 | あらためてユニバーサル・デザインを考える2 ユニバーサル・デザインがもたらした、負の影響とはなにか 「バリアフリーコンフリクト」とはなにか、ニーズの異なる者が利用する公共空間の設計の方法と意志決定 |
第7回 | バリアフリーや建築安全計画が人間にもたらしたもの1 繁栄か堕落か 段差を残したほうがよいという「高齢者対応住宅」その根拠と設計者の対応 |
第8回 | バリアフリーや建築安全計画が人間にもたらしたもの2 モラルハザードによる危険回避能力低下と建築計画 日頃から危険やバリアを経験することは、危険回避能力を育むのか 環境に、ある程度危険な要素がなければ子どもの危険回避能力は育まれないという考え 「意図して設計された」危険 リスクとハザードは、国内外ではどのようにとらえられていたか |
第9回 | 最近の動向1 子育てバリアフリーとはなにか 少子化社会において、国交省はなにを期待しているのか 「安心して子育てができる環境整備のあり方に関する調査研究」とはどのようなものであったか |
第10回 | 最近の動向2 子育てバリアフリーとはなにか 生活環境の変化が、親の子育て行動にどのように影響を与えているか 変革する子育て環境と親の行動に、社会インフラはどのように対応したか、対応できなかったか 子育て環境において、住宅や公共交通機関、まちづくりに求められているものとはなにか |
第11回 | 最近の動向3 知的障害者・精神障害者、発達障害者等に対応したバリアフリー化施策とはなにか2 国交省「知的障害者・精神障害者、発達障害者等に対応したバリアフリー化施策に係る調査研究」とはどのようなものであったか その効果と評価 |
第12回 | 最近の動向4 知的障害者、精神障害者、認知症状のある高齢者と環境設計 理解困難については、さまざまな特性があることを理解して、それらの人々の利用のために、環境を適応させるための方策 |
第13回 | 最近の動向5 色覚バリアフリーの意味と功罪 デザイナーの間に急激に広まる色覚障害者の存在 色覚バリアフリーとはなにか われわれはなにをすればよいのか 色覚バリアフリーが、デザイン教育や当事者に及ぼす負の影響とはなにか |
第14回 | 最近の動向6 国交省主導のだれにでもわかりやすい「サイン計画」とは 近年変革した公共交通機関のサイン計画の背景と、その思想 だれがどのようにデザインするのか わかりやすい公共建築(まち)とは、どのようにすべきか |
第15回 | 全体総括と、建築計画が貢献できるノーマライゼーションに関する考察 レポート課題の出題 |
その他
教科書 |
特になし、資料を配付する。
また必要に応じて文献を紹介する。
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
講義において、必要に応じて市販されている関連書を紹介する
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成績評価の方法 及び基準 |
レポート課題(100%)で評価する ここには、課題プレゼンテーションの評価を加味する |
質問への対応 | 講義を行う教室、もしくは研究室で受ける |
研究室又は 連絡先 |
初回講義時に開示する。 |
オフィスアワー |
月曜 船橋 15:00 ~ 16:00
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学生への メッセージ |
ノーマライゼーションに対応した生活環境整備とは、けっして特別な人のための特別な計画 やデザインではありません。だれもがまちや建築物を安全で快適に使用するための、すべての建築物や製品等がもつべき基本的な性能保障であると考えています。本講義は、単に技術的な方法を述べるのでなく、それらの技術的指標がどのような背景でつくり出されたか、それらが人間の生活権にどのように影響を及ぼしたかを探求するものである。ものづくりの基本的な考え方を構築する「基本思想」として知ってもらいたい情報と考えています。 |