2015年 大学院理工学研究科 シラバス - 不動産科学専攻
設置情報
科目名 |
都市開発計画特論Ⅱ
ウォーターフロント計画を巡って
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設置学科 | 不動産科学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 横内 憲久 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 木曜2 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | N42A |
クラス |
概要
学修到達目標 | 都市のウォーターフロント計画を策定するには、国土計画や道州制を念頭においた広域計画 の理解が必要になる。また、その実行を担保する法制や計画策定手法を理解することが本講義の目標となる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
パワーポイントを用いた講義形式で行う。また、理解を深めるためにオリジナルテキスト、 コピー等を配布する。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
シラバスで各回の「授業計画」の内容を確認し授業に臨むこと。 |
授業計画
第1回 | 沿岸域・ウォーターフロント・水辺の概要 1972年アメリカで策定されたCZMA(Coastal Zone Management Act)は、沿岸域管理と訳され、わが国には衝撃的に紹介された。海に直角に切られた行政界ではなく、海岸線に沿ってある一定の領域を「沿岸域」として管理していこうというものである。わが国で「沿岸域」という言葉が、1977年の第3次全国総合開発計画で初出したが、本講義ではこの「沿岸域」と「ウォーター フロント」と「水辺」といった水域を有する空間の差異を各種計画論から解説し、これらの理 解を深める。 |
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第2回 | 国土計画と沿岸域① わが国の国土計画は戦時中の1940年企画院によってつくられた国土計画設定要綱が初めといわれている。法としては、国土の均衡ある利用を目的とした1950年の国土総合開発法である。実質的な国土計画は本法を根拠に策定された、1962年の全国総合開発計画(全総)からであり、沿岸域は国の発展に寄与してきたとともに、一方で開発に翻弄されてきた地域ともいえる。ここでは、一全総から二全総を概観して現在の国の成り立ちを概観する。 |
第3回 | 国土計画と沿岸域② ここでは前回に引き続き三全総、四全総について学ぶ。とくに「沿岸域」という言葉が初出した三全総を詳述する。 |
第4回 | 全国総合開発計画の終焉と成果 全総は五全総を最後に幕を閉じた。全総の根拠法であった、国土総合開発法も2008年に国土形成計画法と改称し、わが国の法律から「開発」の文字が消えた。全総はその大きな目的のひとつであった、格差是正を果たせなかったが、流域圏や沿岸域など、広域計画の考え方は残せた。ここでは、全総の総括とその成果について解説する。 |
第5回 | 沿岸域計画の現状と展望 海岸線総延長距離約3万5000kmと国土の約2/3は山岳地帯といわれるわが国は、わが国の沿岸域の法制度の現状、そこでの沿岸域の捉らえ方および2007年7月に施行された海洋基本法での沿岸域管理のあり方などを解説する。さらに、沿岸域と行政との関係から沿岸域管理の問題点をいかに解消するかの将来展望を述べていく。 |
第6回 | 沿岸域計画・ウォーターフロント開発の基本理念 沿岸域整備やウォーターフロント開発等を評価する際に、評価基準ともいうべき3つの基本理念がある。それらがどのような空間概念であるかを学ぶ。沿岸域やウォーターフロントは国民全体の財産ともいえるため、その有効活用のための作法の必要性を説く。 |
第7回 | 基本理念①「水辺の開放」 「水辺の開放」open to publicの具体的概念 水辺の開放には、水面の眺望・水辺への接近性・水と遊ぶ・水と憩う・楽しく歩ける・食事を楽しむなどのキーワードがある。その空間創造の計画手法を解説する。 |
第8回 | 基本理念②「都市の連続性」 「都市の連続性」urban contextの具体的概念 都市の連続性には、都市の中の水辺と後背地との一体化・河川や海との一体化・沿岸域がこれまで培ってきた歴史や文化の継承などのキーワードがある。その空間創造の計画手法を解説する。 |
第9回 | 基本理念③「自然との調和」 「自然との調和」respect for natureの具体的概念 沿岸域やウォーターフロントが多くの人々を魅了してきた要因の一つに海の自然がある。利用や整備の結果、この環境を蔑にしては意味がない。自然との調和には、物質循環・生態系の保全・水質の浄化・浸水防止・自然環境への対応などのキーワードがある。その空間創造の計画手法を解説する。 |
第10回 | 沿岸域・ウォーターフロントに関する小テストおよび解説 これまでの理解を考査するために、小テストを行う。テスト終了後に解説を行い、早期に理解を深めることとする。 |
第11回 | ウォーターフロントの計画①マネージメントストラテジー 沿岸域計画の核となるウォーターフロントの計画を通して、ウォーターフロント開発を策定する際の留意事項を解説する。第一段階としては、計画のマネージメントを、わが国での開発戦略・ターゲットの設定・開発戦略の立案等を述べる。 |
第12回 | ウォーターフロントの計画②マネージメントノート ウォーターフロントの策定で留意しなければならない事項をマネージメントノートとして解説する。大別して、地域に賦存する歴史・文化の展開、パフォーマンスやプロモーションのあり方、自然の演出、風景の演出、回遊路やアクセスの整備などを解説する。 |
第13回 | ウォーターフロントの計画③スペースマネージメント ウォーターフロントを計画するためには人にとって居心地のよい空間を提供しなければならない。そのため、街区の設定、道路や公園等のインフラの考え方、水域の生かし方、空や海がもたらすウォーターフロントならではのスケールの捉え方などを解説する。 |
第14回 | ウォーターフロントの計画④沿岸域の法制度 法治国家であるわが国において、諸計画や整備等を現実的に行うには既存の法制度等に合致している必要がある。海洋基本法、国土形成計画法をはじめ、都市計画法、建築基準法等の空間にかかわる法制度の整理を行う。 |
第15回 | 沿岸域・ウォーターフロント計画論のまとめ 沿岸域・ウォーターフロント計画は、まちから国土まできわめて計画の幅が広い。しかしながら、これを断片的に理解するだけでは意味がない。そこで、これまでの講義内容を時系列・空間列的に置き直して、まとめとして解説する。レポート課題出題。 |
その他
教科書 |
『テキスト(自主作成)』
教科書は、オリジナルテキストを配布し、それを用いて行う。
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
参考書等は授業時に適宜紹介する。
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成績評価の方法 及び基準 |
評価は授業態度(10%)、小テスト(40%)、レポート(50%)等により総合的に行う。 |
質問への対応 | 質問等は授業中およびE-mailにより常時受付け、授業時に回答する(ただし、匿名は受付けない)。 |
研究室又は 連絡先 |
駿河台キャンパス5号館9階596B室 横内研究室 E-mail;yokouchi.norihisa@nihon-u.ac.jp |
オフィスアワー |
木曜 駿河台 12:00 ~ 15:00 5号館9階研究室
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学生への メッセージ |
ウォーターフロント計画は、重要性は認識しつつも、どこの大学でも本格的には行っていない。東日本大震災でようやくウォーターフロントや沿岸域のあり方が問われた。あり方を探求するにはふさわしい講義である。 |