2016年 理工学部 シラバス - 物理学科
設置情報
科目名 | 電磁気学Ⅲ | ||
---|---|---|---|
設置学科 | 物理学科 | 学年 | 3年 |
担当者 | 出口 真一 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 月曜2 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | M12M |
クラス |
概要
学修到達目標 | Maxwell方程式に基づいて電磁気学を系統的に理解することを目標にする.始めに,電磁気学IIIで用いる数学を学び、電場と磁場の性質をMaxwell方程式を中心にして復習する.その後,Maxwell方程式の微分形をもとにして,電荷の保存則,電磁場のエネルギーと運動量の保存則を導けるようにする.また,時間的に変動する電荷,電流分布がある場合のMaxwell方程式の解を実際に求め,その物理的意味を理解する.その後,物質中の電磁場,導体中の電磁波の振舞いを学習する.さらに,磁場が関わる量子論的な性質であるAharonov-Bohm効果を学ぶ. |
---|---|
授業形態及び 授業方法 |
あらかじめ配布した講義ノート冊子に基づき,板書を中心とした講義形式で授業を行う.また,必要に応じてパソコン・プロジェクターを用いて講義内容の解説をする.課題として演習問題を出題する. |
履修条件 | 電磁気学の初歩的知識を有することが望ましい.しかし,新たに電磁気学を学習しようとする初学者,他の電磁気学講義・演習で単位を取得していない学生にも十分に対応する. |
授業計画
第1回 | 電磁気学の全体像と展望 -電磁気学IIIの目的と他の電磁気学の講義との違いを確認し,現代物理学の立場から見た電磁気学について知る. |
---|---|
第2回 | 電磁気学IIIで用いる数学1(ベクトル解析,Gaussの定理、Stokesの定理) -電磁気学全般で使用される数学を復習をかねて学ぶ. |
第3回 | 電磁気学IIIで用いる数学2 (デルタ関数,Fourier変換) -微分方程式の解法などに用いられる数学を学習する. |
第4回 | 初歩的な電磁気学の復習,真空中のMaxwell方程式の積分系 -電磁気学の基本法則を復習し、基礎知識を確かなものにする. |
第5回 | 真空中のMaxwell方程式の微分形,電荷の保存則、Poisson方程式,Lorentz力 -電磁気学の基礎方程式を整理し,電磁気学の全体像を把握する.特にMaxwell方程式から連続の方程式を導き、それが電荷の保存を表すことを学習する. |
第6回 | 電磁場のエネルギーと運動量、それらの保存則 -電磁場と荷電粒子の相互作用を調べ,それに基づいて電磁場を含む系のエネルギーと運動量の保存則を導く. |
第7回 | 波動方程式の解と波動の伝播,真空中の電磁波とその性質(電磁波の速さ、偏光) -Maxwell方程式から波動方程式を導き、それを解く.波の伝播とそれに関わる用語を理解し,電磁波が横波であることを確認する. |
第8回 | スカラーポテンシャルとベクトルポテンシャル,ゲージ変換 -電場と磁場をポテンシャルを用いて表す。また、そこに現れるゲージ不変性について学ぶ. |
第9回 | ポテンシャルを用いて書かれたMaxwell方程式,ゲージ条件 -Maxwell方程式をゲージポテンシャルを用いて書き直す.また、ローレンスゲージ条件を与え,波動方程式を導く. |
第10回 | Maxwell方程式のGreen関数,遅延ポテンシャルと先進ポテンシャル -源がある場合にゲージポテンシャルで書かれたMaxwell方程式を与え,それを解く.適切な境界条件を与え、遅延ポテンシャルと先進ポテンシャル導く. |
第11回 | Maxwell方程式の一般解,変動する電荷と電流が作る電磁場とその特徴 -先に求めた遅延ポテンシャルを用いて,Maxwell方程式の一般解を導出する.それを基に,特殊な状況下での電磁場の振る舞いを調べる. |
第12回 | 電気双極輻射,アンテナ -電気双極子やアンテナから生じる電磁波の性質を学ぶ. |
第13回 | 物質中のMaxwell方程式,導体中の電磁波 -物質中のMaxwell方程式を与え、それから導体中の電磁場が従う減衰項をもつ波動方程式を導く.実際にそれを解き、導体中の電磁場の性質を明らかにする. |
第14回 | 荷電粒子に対するSchreodinger方程式,Aharonov-Bohm効果 -ゲージポテンシャルを含むSchreodinger方程式を与え,それを基にAharonov-Bohm効果を学ぶ.ゲージポテンシャルが単なる数学的道具ではなく,物理的な実態であることを認識する. |
第15回 | 平常試験(授業内試験)とその解説 -電磁気学IIIの講義内容に関して試験を行い,その後,試験問題の解説をする. |
その他
教科書 |
特に指定の教科書は無い.講義ノートを冊子にしたものを配布する.
|
---|---|
参考書 |
牟田泰三 『電磁力学』 岩波講座 現代の物理学2 岩波書店 1996年 第2版
平川浩生 『電磁力学』 新物理学シリーズ12 培風館
長岡洋介 『電磁気学』 物理入門コース4 岩波書店
和田純夫 『振動・波動のききどころ』 物理講義のききどころ 岩波書店
鈴木久男 他 『動画だからわかる物理』 熱力学・電磁気学 編 丸善株式会社 2007年 第1版
岡 真 『電磁場の古典論』 新物理学シリーズ39 培風館 2009年 第1版
太田浩一 『電磁気学の基礎 I,II』 東京大学出版会 2012年 第1版
参考書のいずれか1つで授業内容のすべてをカバーしているわけではない.あくまでも授業の一部を補足する参考書として考えてほしい.
|
成績評価の方法 及び基準 |
平常試験(授業内試験)の点数を評価の対象とする. 授業内試験または期末試験を予定しているが,講義室の空き状況により正確な実施は未定であり,授業内試験が期末試験に,期末試験が授業内試験に変更となる可能性がある.正確な内容が決定され次第,授業でアナンスする. |
質問への対応 | 基本的には,各週の授業終了後を質問の時間とする.授業終了後に時間が取れないときは,代わりの時間を設ける.できる限り随時質問に応じる. |
研究室又は 連絡先 |
研究室はガイダンスのときに公表する.E-mail address: deguchi@phys.cst.nihon-u.ac.jp TEL: 03-3259-0867 |
オフィスアワー |
火曜 駿河台 12:00 ~ 13:00 4号館5階453A室
|
学生への メッセージ |
電磁気学は物理学のすべての分野において重要です.電磁気学IIIでは,電磁場がエネルギーや運動量をもつ「物理的実態」であることを強調します.また「近接作用」や「場」という概念がより身近に感じられるように授業を進めていきたいと思います. |