2019年 理工学部 シラバス - 電子工学科
設置情報
科目名 | 電子物性工学 | ||
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設置学科 | 電子工学科 | 学年 | 2年 |
担当者 | 岩田 展幸 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 火曜3 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | J23C |
クラス | |||
ポリシー | ディプロマ・ポリシー【DP】 カリキュラム・ポリシー【CP】 | ||
履修系統図 | 履修系統図の確認 |
概要
学修到達目標 | 基礎的な電子物性の知識をベースとして、電子の波動性を理解し、基礎的な電気伝導を理解する。結晶の周期性とバンド構造、電気特性の違いについて理解する。結晶の構造解析手法であるX線回折の原理と応用例を修得し、フーリエ変換と逆格子について理解する。こうした電子物性の基礎を修得することによって、物質の電気特性や結晶の周期性の重要性をより深く理解する能力が身につく。また、半導体物性ならびにデバイス応用を学習する準備を整えることができる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
講義は板書とともに、授業内容理解を助けるプリントを配布する。学習の理解を深めるために、課題・宿題に取り組んでもらう。 |
履修条件 | 高校で学習する基礎的な物理・化学に関する知識、大学における教養課程での物理学の知識を有していること。また、基礎電子物性の単位を取得していることが望ましい。 |
授業計画
第1回 | 波が満たす方程式(1)波動方程式、シュレディンガー方程式 波動方程式からシュレディンガー方程式を導出する。周期的境界条件から波数kが離散値となることを示す。確率波および規格化について説明する。 【事前学習】「図でよくわかる電磁気学」13.1、13.2にある「波動方程式」の概要を理解し、教科書・参考書を参照して、「シュレディンガー方程式」に関する概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) |
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第2回 | 波が満たす方程式(2)波動と粒子の二重性、平面波 電子が持つ波動および粒子の性質と描像を説明する。電子を波動として考えた時の平面波について説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して「波動と粒子の二重性」「平面波」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) 「第1回自宅中間テスト」を実施します。何を参考にしても良いので、問題を解き、レポート形式で次回授業の開始直前に提出してください。授業開始約20分後ごろに解答例を配布します。それ以降の提出はできません。 |
第3回 | 自由な電子の動き 自由電子気体・自由電子のイメージ、k空間、フェルミエネルギー、フェルミ波数、フェルミ温度、パウリの原理ついて説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して「自由電子」「k空間」「フェルミエネルギー」「パウリの原理」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) |
第4回 | 電子分布 単位体積、単位エネルギーあたりの量子状態の数(状態密度)について説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して上記記載の「状態密度g(E)」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) |
第5回 | 分布関数 パウリの原理に従うフェルミ粒子が満たすFermi-Dirac分布関数の特徴について説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して上記記載の「Fermi-Dirac(フェルミ-ディラック)分布関数」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) 「第2回自宅中間テスト」を実施します。何を参考にしても良いので、問題を解き、レポート形式で次回授業の開始直前に提出してください。授業開始約20分後ごろに解答例を配布します。それ以降の提出はできません。 |
第6回 | 電気伝導(1) あるエネルギーEにおける単位体積あたりの電子密度について説明する。自由電子の電気伝導について説明する。ドリフト速度、衝突時間、平均自由行程、電流密度、移動度、導電率/抵抗率について理解する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して「電子密度」「ドリフト速度」「電流密度」「移動度」「導電率」「抵抗率」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) |
第7回 | 電気伝導(2) 電気伝導に関する例題を解く。 【事前学習】前回学習した内容を復習しておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) 「第3回自宅中間テスト」を実施します。何を参考にしても良いので、問題を解き、レポート形式で次回授業の開始直前に提出してください。授業開始約20分後ごろに解答例を配布します。それ以降の提出はできません。 |
第8回 | 結晶周期性による電子状態(1)周期ポテンシャル中の電子の挙動 周期ポテンシャルによるエネルギーギャップの発生とバンド構造について説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して「エネルギーギャップ」「バンド構造」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) |
第9回 | 結晶周期性による電子状態(2) 周期ポテンシャルを考えた時、バンドギャップが発生してバンド構造を形成する。この時、電子の挙動は自由電子のそれとは異なってくることを群速度、有効質量を題材に挙げて説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して「群速度」「有効質量」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) 「第4回自宅中間テスト」を実施します。何を参考にしても良いので、問題を解き、レポート形式で次回授業の開始直前に提出してください。授業開始約20分後ごろに解答例を配布します。それ以降の提出はできません。 |
第10回 | 結晶周期性による電子状態(3)ブロッホの定理、逆格子ベクトル、ブラッグ条件 周期ポテンシャルを反映した波動関数・ブロッホ関数が満たすべきブロッホ条件およびブロッホの定理について説明する。ブラッグ条件と逆格子ベクトルおよび波数ベクトルについて説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して「ブロッホ関数」「ブロッホの定理」「逆格子ベクトル」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) |
第11回 | 結晶周期性による電子状態(4)ブリルアンゾーン、ブラッグ条件、電気伝導 1,2,3次元ブリルアンゾーン、ゾーン方式、1,2,3次元k空間におけるブラッグ条件と電気伝導について説明する。単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子の逆格子ベクトルについて説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して「ブリルアンゾーン」「ブラッグ条件」「逆格子空間における電気伝導・逆格子点」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) 「第5回自宅中間テスト」を実施します。何を参考にしても良いので、問題を解き、レポート形式で次回授業の開始直前に提出してください。授業開始約20分後ごろに解答例を配布します。それ以降の提出はできません。 |
第12回 | X線回折(1)フーリエ変換 フーリエ級数展開、複素フーリエ級数、周期が任意のa[m]とした時の複素フーリエ級数、フーリエ変換、波束のフーリエ変換について説明する。 【事前学習】フーリエ変換に関する教科書を参考にして「複素フーリエ級数展開」を理解しておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) 「第6回自宅中間テスト」を実施します。何を参考にしても良いので、問題を解き、レポート形式で次回授業の開始直前に提出してください。授業開始約20分後ごろに解答例を配布します。それ以降の提出はできません。 |
第13回 | X線回折(2) 電子密度とフーリエ級数展開、X線散乱、散乱ベクトル、ラウエの回折条件、ブラッグ条件 実空間上で周期性を持つ電子密度のフーリエ級数展開について説明する。それが逆空間でどのように表現できるかを、ある物質からのX線の散乱強度を計算することで説明する。その計算結果としてブラッグの回折条件との関連性を説明する。 【事前学習】教科書・参考書を参照して「ラウエの回折条件」について概要を調べておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) |
第14回 | X線回折(3)ブラッグの回折条件、エヴァルド球、構造因子、原子構造因子、消滅則 ブラッグの回折条件に関する詳細な解説とエヴァルド球を用いたブラッグ回折について説明する。電子密度の周期性を逆空間で表現し、その強度を具体的な結晶を用いて計算する。また、ブラッグ条件を満たしても回折強度がゼロとなる消滅則について説明する。 【事前学習】前回までの授業で解説した「基本並進ベクトル」「逆格子ベクトル」「面間隔」「ブラッグ条件」について詳しく理解しておくこと。(120分) 【事後学習】板書の内容を見返しながら、授業中に説明した事柄について、理解を深めること。(120分) 「第7回自宅中間テスト」を実施します。何を参考にしても良いので、問題を解き、レポート形式で次回授業の開始直前に提出してください。授業開始約20分後ごろに解答例を配布します。それ以降の提出はできません。 |
第15回 | X線回折(4)X線回折に関する具体的な問題を解く。 問題は、「第8回自宅中間テスト」として実施する。授業終了時に回答をレポート形式で提出し、同時に解答例を配布する。 【事前学習】前回までの授業で解説した「結晶構造(基礎電子物性にて解説)」「基本並進ベクトル」「逆格子空間」「逆格子ベクトル」「面間隔」「ブラッグ条件」「散乱ベクトル」「消滅則」について詳しく理解しておくこと。(120分) 【事後学習】配布した解答例を熟読し、十分に理解すること。(120分) |
その他
教科書 |
川辺和夫、平木昭夫、岩見基弘 『基礎電子物性工学』 コロナ社
坂田亮 『物性科学』 培風館
永田一清 『物性物理学』 裳華房
沼居貴陽 『固体物性入門』 森北出版
小島誠治・澤田昭勝・中村輝太郎 訳 『固体の諸性質』 東海大学出版会
長尾辰哉 他 訳 『固体の電子論』 東海大学出版会
志賀正幸 『材料科学者のための固体電子論入門 エネルギーバンドと固体の物性』 内田老鶴圃
志賀正幸 『材料科学者のための固体物理学入門』 内田老鶴圃
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参考書 |
宇野良清 他 共訳 『キッテル 固体物理学入門』 丸善
作道恒太郎 『固体物理 格子振動・誘電体』 裳華房
黒沢達美 『物性論 -固体を中心とした-』 裳華房
今野豊彦 『物質からの回折と結像』 共立出版
小出昭一郎 『量子力学(I)』 裳華房
固体の性質を議論するとき、高校とは異なった感覚での理解が必要である。その理解に慣れるために、多くの教科書を読み比べることが、理解の近道である。よって、簡単に説明してある参考書を紹介する。図書館等で是非、読み比べて欲しい。
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成績評価の方法 及び基準 |
定期試験 80% 自宅中間テスト 20% |
質問への対応 | 講義や演習中に随時受け付けるが、研究室に来てくれてもかまわない。当研究室の大学院生は固体物理を勉強しており、いつでも教えられる。 |
研究室又は 連絡先 |
4号館412室 |
オフィスアワー |
水曜 船橋 10:30 ~ 12:10 4号館412室
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学生への メッセージ |
物の性質を理解するためのわかりづらい式が多く出てくるが、その式の意味することをイメージとして頭に残して欲しい。 |