2019年 理工学部 シラバス - 物理学科
設置情報
科目名 |
電磁気学Ⅲ
電磁気学の全貌を学ぶ
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設置学科 | 物理学科 | 学年 | 3年 |
担当者 | 出口 真一 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 火曜2 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | M22O |
クラス | |||
ポリシー | ディプロマ・ポリシー【DP】 カリキュラム・ポリシー【CP】 | ||
履修系統図 | 履修系統図の確認 |
概要
学修到達目標 | Maxwell方程式に基づいて電磁気学を系統的および大局的に理解することを目標にする.また,この授業により現代物理学の根幹である「場」という概念を身に付けることも目標とする. 始めに,電磁気学IIIで用いる数学を学び、電場と磁場の性質をMaxwell方程式を中心にして復習する.その後,Maxwell方程式の微分形をもとにして,電荷の保存則,電磁場のエネルギー・運動量・角運動量とそれらの保存則を導けるようにする.また,Green関数について学んだ後,時間的に変動する電荷,電流分布がある場合のMaxwell方程式の解を実際に求め,その物理的意味を理解する.その後,物質中の電磁場,導体中の電磁波の振舞いを学習し理解する.さらに,磁場が関わる量子論的な効果であるAharonov-Bohm効果を学び、その重要性を認識する. |
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授業形態及び 授業方法 |
あらかじめ配布した講義ノート冊子に基づき,板書を中心とした講義形式で授業を行う.また,必要に応じてパソコン・プロジェクターを用いて講義内容の解説をする.課題として演習問題を出題する. |
履修条件 | 電磁気学の初歩的知識を有することが望ましい.しかし,新たに電磁気学を学習しようとする初学者,他の電磁気学講義・演習で単位を取得していない学生にも十分に対応する. |
授業計画
第1回 | 電磁気学の全体像と展望 -電磁気学IIIの目的と他の電磁気学の講義との違いを確認し,現代物理学の立場から見た電磁気学について知る.また,授業で用いる記法とベクトルに関わる幾つかの定義を学ぶ.事後学習として,授業内容を復習すると共に、講義ノート冊子の6ページの問題9を解くこと(120分).事前学習として,次回に学ぶベクトル解析,Gaussの定理、Stokesの定理について講義ノート冊子の内容を予習し,分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
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第2回 | 電磁気学IIIで用いる数学1(ベクトル解析,Gaussの定理、Stokesの定理) -電磁気学全般で使用されるベクトル解析などを復習をかねて学ぶ.特にGaussの定理とStokesの定理については、その物理的意味に重点を置いて理解する.事後学習として,講義ノート冊子の5ページと6ページの演習問題(問題9以外)を解くこと(120分).事前学習として,次回に学ぶデルタ関数やFourier変換について講義ノート冊子の内容を予習し,分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第3回 | 電磁気学IIIで用いる数学2 (デルタ関数,Fourier変換) -微分方程式の解法などに用いられる数学を学習する.特にデルタ関数とFourier変換の直感的描像とその性質を理解する.事後学習として,授業の内容を復習し,講義ノート冊子の12ページにある演習問題を解くこと(120分).事前学習として,講義ノート冊子や他の電磁気学のテキストを読み,Maxwell方程式の積分系について分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第4回 | 初歩的な電磁気学の復習,真空中のMaxwell方程式の積分系 -電磁気学の基本法則を復習し、基礎知識を確かなものにする.特に,Gaussの法則,Ampereの法則,Faradayの法や,変位電流の必要性について学ぶ.事後学習として,講義ノート冊子や電磁気学の他のテキストをもとに授業内容を復習すること(120分).事前学習として,講義ノート冊子や他の電磁気学のテキストを読み、Maxwell方程式の微分形について分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第5回 | 真空中のMaxwell方程式の微分形,電荷の保存則、Poisson方程式,Lorentz力 -電磁気学の基礎方程式を整理し,電磁気学の全体像を把握する.特にMaxwell方程式から連続の方程式を導き、それが電荷の保存を表すことを学習する.また点電荷を源に持つPoisson方程式を実際に解き,Coulombの法則が導かれることを確認する.さらに,Lorentz力について学ぶ.事後学習として,連続の方程式から電荷の保存則を導く手法を復習し,その内容を良く理解すること.また,講義ノート冊子の20ページにある演習問題を解くこと(120分).事前学習として.講義ノート冊子を読み,電磁場のエネルギーとエネルギー保存則について分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第6回 | 電磁場のエネルギー・運動量・角運動量と、それらの保存則 -電磁場と荷電粒子の相互作用を調べ,それに基づいて電磁場を含む系のエネルギーと運動量の保存則、さらに角運動量保存則を導く.これにより,電磁場が力学の対象であることを理解する.また,PoyntingベクトルやMaxwellの応力について学ぶ.事後学習として,電磁場を含む系の運動量保存則と角運動量保存則の導出について復習すること(120分).事前学習として,講義ノート冊子や他のテキストを読み,波動方程式の解き方や波に関する物理量(波長,振幅,位相,周期,波数)についてまとめておくこと(120分). |
第7回 | 波動方程式の解と波動の伝播,真空中の電磁波とその性質(電磁波の速さ、偏光) -Maxwell方程式から波動方程式を導き、それを解く.波の伝播とそれに関わる用語を理解し,電磁波が横波であることを確認する.また,光の正体が電磁波であることや光の直線偏光と円偏光についても学ぶ.事後学習として,電磁波の性質について授業内容を復習し理解すること.また,講義ノート冊子の41ページにある演習問題を解くこと(120分),事前学習としては,講義ノート冊子読み,電磁場のポテンシャルとゲージ変換について分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第8回 | スカラーポテンシャルとベクトルポテンシャル,ゲージ変換 -電場と磁場をスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルを用いて表す。また、そこに現れるゲージ変換とゲージ不変性について学習し,ゲージ不変性が現代物理学の原理の1つであることを知識として学ぶ.事後学習として,ゲージ変換とゲージ固定について授業内容を復習し理解すること(120分).事前学習としては,講義ノート冊子読み,電磁場のポテンシャルで書かれたMaxwell方程式とゲージ固定について分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第9回 | ポテンシャルを用いて書かれたMaxwell方程式,ゲージ条件 -Maxwell方程式をスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャル(まとめてゲージポテンシャル)を用いて書き直す.また、Lorenzゲージ条件を与え,ゲージポテンシャルが満たす,源をもつ波動方程式を導く.事後学習として,講義で行った式変形および波動方程式の導出を復習し理解すること.また,講義ノート冊子の45ページにある演習問題を解くこと(120分),事前学習としては,講義ノート冊子を読み,Green関数とそれが満たす方程式について分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第10回 | Maxwell方程式のGreen関数,遅延ポテンシャルと先進ポテンシャル -源がある場合にゲージポテンシャルで書かれたMaxwell方程式を与え,それを解く.適切な境界条件を与え、複素積分を用いることで遅延グリーン関数を導き、それを用いてゲージポテンシャルで書かれたMaxwell方程式の解を求める.また,遅延グリーン関数が持つ物理的内容を理解する.事後学習として,講義で行った式変形および遅延グリーン関数の導出を復習し理解すること.また,講義ノート冊子の51ページにある演習問題を解き,先進グリーン関数を導くこと(120分),事前学習としては,講義ノート冊子を読み,Maxwell方程式の一般解の導出について分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第11回 | Maxwell方程式の一般解,変動する電荷と電流が作る電磁場とその特徴 -先に求めたゲージポテンシャルで書かれたMaxwell方程式の解を用いて,Maxwell方程式の一般解(電場と磁場)を導出する.この解が特殊な場合としてCoulombの法則やBiot-Savartの法則を含むことを確認する.また遠方で有効となる項に注目し,それを基に特殊な状況下での電磁場の振る舞いを調べる.事後学習として,電場と磁場の導出で行った式変形を復習し理解すること.また,講義ノート冊子の53ページにある演習問題を解くこと(120分).事前学習としては,講義ノート冊子を読み,電気双極子放射について分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第12回 | 電気双極子放射,アンテナ -前回求めた遠方での電磁場の表式を基にして,電気双極子やアンテナから生じる電磁波(電気双極子放射)の性質を学ぶ.事後学習として,講義で行った式変形および電気双極子が遠方に作る電場の振る舞いを復習し理解すること.また,講義ノート冊子の62ページにある演習問題を解き,Biot-Savartの法則を導くこと(120分),事前学習としては,電磁気学の教科書を参照し,誘電率と透磁率,分極と磁化についてまとめ,分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第13回 | 物質中のMaxwell方程式,導体中の電磁波 -誘電体、磁性体、導体に関して手短な復習を行い,物質中のMaxwell方程式を与える.これを基に,導体中の電磁場が従う減衰項をもつ波動方程式を導く.実際にそれを解き、導体中の電磁場の振る舞いを理解する.事後学習として,講義で行った式変形および導体中の電磁場の振る舞いを復習し理解すること(120分).事前学習としては,量子力学の基礎方程式であるSchreodinger方程式について復習し,分からないことを質問できるようまとめておくこと(120分). |
第14回 | 荷電粒子に対するSchreodinger方程式,Aharonov-Bohm効果 -ゲージポテンシャルを含むSchreodinger方程式を与え,それを基にAharonov-Bohm効果を学ぶ.ゲージポテンシャルが単なる数学的道具ではなく,量子力学において必要不可欠な物理的実態であることを認識する.事後学習としては,授業内容を復習てゲージポテンシャルの有用性を理解すること(60分).事前学習としては,次回に行われる平常試験に備え,講義内容全体について復習すること(180分). |
第15回 | 平常試験(授業内試験)とその解説 -電磁気学IIIの講義内容に関して試験を行い,その後,試験問題の解説をする. |
その他
教科書 |
特に指定の教科書は無い.講義ノートを冊子にしたものを配布する.
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参考書 |
牟田泰三 『電磁力学』 岩波講座 現代の物理学2 岩波書店 1996年 第2版
平川浩生 『電磁力学』 新物理学シリーズ12 培風館
長岡洋介 『電磁気学』 物理入門コース4 岩波書店
和田純夫 『振動・波動のききどころ』 物理講義のききどころ 岩波書店
鈴木久男 他 『動画だからわかる物理』 熱力学・電磁気学 編 丸善株式会社 2007年 第1版
岡 真 『電磁場の古典論』 新物理学シリーズ39 培風館 2009年 第1版
太田浩一 『電磁気学の基礎 I,II』 東京大学出版会 2012年 第1版
中山正敏 『ひとりで学べる電磁気学』 ブルーバックス 講談社 2016年
参考書のいずれか1つで授業内容のすべてをカバーしているわけではない.あくまでも授業の一部を補足する参考書として考えてほしい.
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成績評価の方法 及び基準 |
平常試験(授業内試験)の点数を評価の対象とする.レポートは平常試験の結果が思わしくない学生に対して評価の基準とする. |
質問への対応 | 基本的には,各週の授業終了後を質問の時間とする.授業終了後に時間が取れないときは,代わりの時間を設ける.できる限り随時質問に応じる. |
研究室又は 連絡先 |
研究室:駿河台校舎8号館2階821A E-mail address: deguchi@phys.cst.nihon-u.ac.jp TEL: 03-3259-0867 |
オフィスアワー |
月曜 駿河台 15:30 ~ 17:00 8号館2階821A室
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学生への メッセージ |
電磁気学は物理学のすべての分野において重要です.電磁気学IIIでは,電磁場がエネルギーや運動量をもつ「物理的実態」であることを強調します.また「近接作用」や「場」という概念がより身近に感じられるように授業を進めていきたいと思います. |