2019年 大学院理工学研究科 シラバス - 土木工学専攻
設置情報
科目名 |
土木構造学特論Ⅴ
鋼構造物の破壊制御から学ぶ、設計、維持管理、アセットマネジメント
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設置学科 | 土木工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 小西・高木 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 木曜5 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | A45A |
クラス |
概要
学修到達目標 | ・鋼構造物の破壊を知り,破壊に基づいた構造物設計の原理を理解する. ・構造物に発生する変状、点検・診断、メンテナンス、アセットマネジメントを理解する。 ・想像力に富み、実務執行能力に優れる専門技術者を目指す。 |
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授業形態及び 授業方法 |
・座学形式の講義である。 ・講義スタイルは、パワーポイントと板書を併用して行う. |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
・構造力学,材料力学の基礎知識を習得していることが望ましい. ・国内外の社会基盤施設の現状を理解し、メンテナンスについて、事前学習が望ましい。 ・ファイナンスエンジニアリングやアセットマネジメント関連資料の事前調査が望ましい。 |
授業計画
第1回 | 鋼材の力学的性質:鉄と比べたときの鋼の特徴,鋼材の応力ひずみ関係,破壊形態に関して,脆性破壊と延性破壊の違い,疲労破壊について説明する. |
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第2回 | 引張り部材の設計:引張り部材はどのような場所に使用されるか,その強度評価について講義を行う.引張りを受ける部材強度は一様ではなく,また部材内部の応力分布は,偏心,応力集中等により均一にはならない.このような影響を考慮した部材設計方法について説明する.またケーブルなど主要引張り部材となるため,その防食が非常に重要であり,これについても併せて説明する. |
第3回 | 圧縮部材の強度と設計:鋼圧縮部材には座屈が発生する.座屈現象と,これによる強度低下を考慮した設計について講義を行う.圧縮梁部材の設計においては部材自体の不均一性と部材配置による偏心曲げが生じ,更に板部材の局部座屈についても,これを考慮して耐荷力を算定し,設計しなくてはならない. |
第4回 | 破壊制御設計:部材は脆性破壊,延性破壊,疲労破壊など破壊形態を示し,さらに材料は加工により,その破壊特性が変化する.これら破壊モードに応じた破壊制御設計について説明する. |
第5回 | 鋼橋の疲労(1):疲労とは何か,なぜ疲労が鋼橋にとって問題なのかを理解する.疲労の基本的な原因は,応力繰り返しの大きさと回数であるが,その発生に影響する種々の要因について説明する. |
第6回 | 鋼橋の疲労(2):実際の疲労は構造物の挙動に密接に関係しており,原因も多様であり,必ずしも応力設計が適用出来ない場合が多い.このような問題に対し,ディテール毎に損傷を分析し,原因推定,対策を行うアプローチが取られる.このような工学的問題解決について解説する. |
第7回 | 継手:構造物耐荷性能は一般的には接合部において決定される.溶接は最も重要な鋼材の接合方法であり,ボルトに比べ施工性,能率が高いが,溶接部の終局は疲労破壊により決定されるため,高い製造品質が求められる.講義では接合部の性能に影響する施工法,残留応力などの影響を説明し,溶接継手部の設計法について,また,その他の材料加工が与える影響について解説する. |
第8回 | 社会基盤施設の現状と維持管理:少子高齢化社会の到来によるインフラストラクチャーの現状と課題について学ぶ。建設から維持管理へ大きく転換している理由と維持管理の基本的な考え方を解説する。 |
第9回 | 変状(損傷と劣化)について:構造物、鋼構造物及びコンクリート構造物に発生する変状について学ぶ。講義では、進展時間軸の短い損傷と進展時間軸の長い劣化について、事例を挙げて発生原因、特徴についてそれぞれ詳細に解説する。 |
第10回 | 点検と診断について:構造物に発生する変状を適切に調査する技術及び各変状別の診断技術について学ぶ。講義では、目視を主体とする調査法、機器を使って定量的に調べる調査法について解説する。また、構造物の健全度レベル(変状レベル)を定量的に評価する診断技術及びモニタリングについて解説する。 |
第11回 | 劣化(寿命)予測と寿命について:時間軸の長い変状である劣化について、どのように進展し、適切な対策時期、更新時期をどのように判断するかを学ぶ。講義では、劣化を予測する手法の代表的な統計的(確率的、確定的)予測法、物理的劣化予測法について、それぞれの劣化予測事例を挙げ、その特徴、課題、将来性等について解説する。 |
第12回 | 維持と補修:構造物の機能・性能を維持する方法、機能・性能を回復させる補修について学ぶ。講義では、機能・性能を維持する方法、考え方、事例と低下した機能・性能を回復させる補修の方法、考え方、設計・施工法を事例を挙げて解説する。 |
第13回 | 補強(長寿命化を含む):低下した機能・性能を向上させる補強について学ぶ。講義では、耐荷性能、耐震性能を向上させる補強について、考え方、材料、方法、補強事例について解説する。特に、耐震補強技術については、地震時性能の基本的な考え方、ツール(ダンパー等)を使った耐震補強について解説する。 |
第14回 | アセットマネジメント:効率的・効果的な投資を行うインフラマネジメントについて学ぶ。 講義では、ライフサイクルコスト、アセットマネジメントを中心に、投資的判断に使う社会的便益(ベネフィット)、会計と説明責任、計画策定、PDCAサイクル等について解説する。 |
第15回 | 平常試験及び全体解説:14回の講義で学んだスキルを確認し、不足しているスキルについて補う。講義では、講義全体で修得していると思われるスキルに関する平常試験を行い、終了後試験内容の解説を行い、修得できなかったスキルを補う。 |
その他
教科書 | |
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
三木千壽 『鋼構造』 共立出版 2004年
依田照彦、髙木千太郎 『橋があぶない』 (株)ぎょうせい 2010年
髙木千太郎 『これでよいのか!インフラ専門技術者』 (株)ぎょうせい 2018年
ここに示した参考書は、いずれも講義を補完する書籍であり、書籍を読解することで、講義の理解度がより高まる。
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成績評価の方法 及び基準 |
①課題レポート:70% ②講義時平常試験:20% ③授業対応意欲:10% |
質問への対応 | ·授業で理解出来ない点、質問は、授業中に質問出来なかった場合は、レポートに記載して頂く。 ・質疑に対しては、次の講義にて解説を行う。また理解出来ていないと思われる点があれば、併せて補足的な説明を行う。 |
研究室又は 連絡先 |
小西非常勤講師:konishi@tcu.ac.jp 髙木非常勤講師:takasent@tecmex.or.jp |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
・講師が実務で得た知識及び経験をベースに講義を進める。 ・行政技術者の考え方が理解でき、実務遂行能力を高める講義である。 |