2019年 大学院理工学研究科 シラバス - 土木工学専攻
設置情報
科目名 |
土質力学特論Ⅵ
(地盤と地下水)
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設置学科 | 土木工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 中川 加明一郎 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 金曜4 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | A54B |
クラス |
概要
学修到達目標 | 多雨多湿な我が国では、各種土木構造物が構築される地盤・岩盤の安定性評価や各種対策を的確に行ううえで、多くの場合地下水の存在を無視できない。この講義を通じて、地盤の特性や探査・調査法の基本概念、解法手順を考察することで、地下水の関わる諸問題を論理的に対処しうる素養を身につけることができる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
授業は板書による講義形式で行う。教科書は指定しないが資料を各回に配布する。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
授業終了時に次回のテーマを提示するので、関連情報の収集に努めること。 |
授業計画
第1回 | 地下水問題概説: まず、地下水の概念を解説する。地下水の価値、用途等、人間生活との関わりを論じる。また地下水を取り巻く諸問題についても概観する。 |
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第2回 | 地下水問題解法の基礎知識: 地下水問題の論理的、客観的な解法は技術者の目標となる。論理的解法のための基礎になる、地下水挙動の数理的な表示について考察する。 |
第3回 | 地下水流動のモデル化: 地中(岩盤・地盤)を流下・循環する地下水の特徴を概説する。また、地下水流動のモデル化が地盤の透水性(地下水の流れやすさ)の区分に帰結することを考察する。 |
第4回 | 地下水に関する地盤の区分方法: 地盤の透水性を区分する方法について議論する。地盤の透水性を網羅的に知ることは困難となるため、地盤の透水性を近似的に区分する必要性を解説する。また、その方法を論じる。 |
第5回 | 地質学的知見による透水性の類推: 地下水の循環する地殻(岩盤・地盤)の構成や変遷を記載する学問体系である地質学的の知見を、透水性区分の観点から整理する。すなわち、岩盤、地盤の構成要素の分類、変成作用や変質、風化といった変遷について概説し、透水性区分への適用性を議論する。 |
第6回 | 地球物理学的知見による透水性の類推: 従来より資源探査を目的として地下内部の様子を推定するために開発されてきた地球物理探査法の、地下水調査への適用を考察する。 |
第7回 | 地下水調査・試験: 地下水の流れやすさ(透水特性)を直接的に知るための、種々の調査・試験法を解説する。 |
第8回 | 地下水流動モデルの確実性を向上させる手順: 地盤や岩盤の区分と透水試験の組み合わせから得られる地下水流動モデルに残る不確実性を認識し、モデルの確実性を向上させる追加的な手続きについて考察する。 |
第9回 | 地下水の水質・年代: 地下水流動モデルの確実性を向上させる追加的な情報という観点から、地下水の水質や地下水年代を議論する。またその方法を紹介する。 |
第10回 | 土木構造物建設における地下水問題の事例検討:ここではトンネル掘削における安定性評価や周辺への影響評価の基本について実際の現場での事例を用いて論じる。 |
第11回 | 地下水と他要素の連成挙動: 地下水挙動は単独で課題となるだけでなく、例えば地下水挙動による斜面の不安定化など力学挙動と関連し合って、問題を引き起こすことがしばしば認められる。このような連成挙動について連成要素をもとに分類し、考察する。 |
第12回 | 地盤の力学挙動と地下水挙動の連成: 他要素との連成挙動の具体例として、力学挙動との連成問題を考える。連成挙動考察の基本となる有効応力についての議論を深める。 |
第13回 | 地盤と異流体の連成: 他要素の連成挙動のもう一つの具体例として、異流体の挙動との連成問題、すなわち気体との二相流挙動を扱う。実例として、地下空洞内での石油・LPG備蓄などのエネルギー貯蔵を解説する。 |
第14回 | 地下水と将来技術: 現世代から将来への負の遺産となる、二酸化炭素(CO2)の問題や放射性廃棄物処分問題にかかわる地下水の課題を探る。 |
第15回 | 平常試験とその解説 |
その他
教科書 | |
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
日本地下水学会, 井田徹治 『見えない巨大水脈 地下水の科学』 ブルーバックス B-1639 講談社 2009年
Steven E. Ingebritsen, Ward E. Sanford, Christopher E. Neuzil, Groundwater in Geologic Processes, Cambridge University Press, 2006, 2 edition
P.A.ドミニコ・F.W.シュワルツ共著 地下水の科学研究会(大西有三)監訳 『地下水の科学1~3(全3巻)』 土木工学社
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成績評価の方法 及び基準 |
授業回ごとに課す小問題(50%)と理解度確認期間(第15回)に実施する平常試験(50%)で評価する. |
質問への対応 | 授業中あるいは授業後でも都度受け付けます。E-mailで質問してもらっても構いません。 |
研究室又は 連絡先 |
k.nakagawa@asahi-net.email.ne.jp または k.nakagawa@diaconsult.co.jp |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
本講義を通して述べる地下水問題解決の論理的な考え方は、地下水に限らず広く土木工学上の問題解決の基本となります。土質力学が専門でない学生諸君の受講を大いに歓迎します。 |