2020年 大学院理工学研究科 シラバス - まちづくり工学専攻
設置情報
科目名 | 環境心理学特論 | ||
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設置学科 | まちづくり工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 亀岡 聖朗 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 金曜4 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | E54A |
クラス |
概要
学修到達目標 | 環境心理学は、物理的な環境だけでなく、対人関係などの社会的環境も含めた総体的な環境と人との関係について探求する学問領域である。本科目では、環境心理学の概論的な講義と都市空間行動に関わる英語文献の講読を通して、環境心理学に対する知識と理解を深める。これまで人間-行動研究の中で研究されてきた事例について理解し議論を行うことで、環境心理学の知識に基づきながら都市環境の中の問題を発見し、その解決方法を提案する力を身につける。 |
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授業形態及び 授業方法 |
本科目は、講義と受講者による発表によって構成される。受講者は各回の内容について自分の興味関心に応じて自分の考え・意見を発表し、全体で共有する。講義で共有する内容に基づいて、全体での議論を行う。メディアを利用した授業と対面での授業を併用する予定である。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
予備知識はとくに求めない。受講者は全講義において、自分の考え・意見を提示することが求められる。各回の授業の内容をよく理解すること。配布資料等の補助資料を用意する。また各回で課題・リアクションペーパーを用意する。なお、受講者人数や状況に応じて、事前・事後学習を含む内容を柔軟に調整する場合がある。 |
授業計画
第1回 | 環境心理学とは/環境心理学の成立の経緯と研究の概観、書籍や論文の紹介と授業スケジュールの決定 [事前学習]シラバスの内容を確認のうえ、授業に臨むこと(120分) [事後学習]今後の自身の研究を考えるうえで、環境心理学の知見がどう生かせるかを考えること(120分) |
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第2回 | 環境の知覚と認知に関する概論と全体議論/視覚を中心とした認知、視覚以外の認知、認知地図を中心に解説 [事前学習]頭の中にある大学キャンパス周辺の地図を、地図を見ないで書いてくること(120分) [事後学習]環境を知覚・認知するしくみについて説明できるように講義内容をまとめる(120分) |
第3回 | 環境の評価に関する概論と全体議論/環境評価の基礎次元と選好を説明する様々なモデルについて解説 [事前学習]人々に好まれる環境の要素にはどのようなものがあるか、考えてくること(120分) [事後学習]人々の多様な好みを集約するには、どのように合意形成すればよいかを考察すること(120分) |
第4回 | 対人・社会的環境に関する概論と全体議論/プライバシー、パーソナル・スペース、テリトリアリティ等について解説 [事前学習]街や大学で人と人がどんな距離で行動しているか、観察してくること(120分) [事後学習]自分の対人関係を振り返り、相手との距離の取り方と相手への好悪との関係を考察すること(120分) |
第5回 | 環境パーソナリティに関する概論と全体議論/パーソナリティが環境評価や行動にどう影響するについて解説 [事前学習]心理学におけるパーソナリティの捉え方について理解すること(120分) [事後学習]講義中に心理検査を体験するので、結果を簡単にまとめておくこと(120分) |
第6回 | 都市環境の環境心理学的研究に関する概論と全体議論/場所愛着と社会的ジレンマを中心に解説 [事前学習]社会的ジレンマとはどんな状態か、日常でみられるジレンマの事例を考えてくること(120分) [事後学習]講義中に体験する2者間のジレンマをふまえ、「コモンズのジレンマ」の解決方略を考えること(120分) |
第7回 | 自然環境の環境心理学的研究に関する概論と全体議論/ストレスと自然が人にもたらす効果について解説 [事前学習]自分にとってのストレスの原因を考えてくること(120分) [事後学習]講義中に環境評価の小実験を行うので、結果を簡単にまとめておくこと(120分) |
第8回 | 環境と犯罪に関する概論と全体議論/環境デザインによる防犯、割れ窓理論やサークル仮説等について解説 [事前学習]日常生活で犯罪不安が高いと感じる場所について、その特徴を考えてくること(120分) [事後学習]まちづくりにおいて犯罪発生や人々の犯罪不安を減らす取り組みを考えること(120分) |
第9回 | 住環境に関する概論と全体議論/ハウスとホーム、高層集合住宅の心理的影響、近隣・地域の問題について解説 [事前学習]各自の居住形態や近隣・地域との関係について考えてくること(120分) [事後学習]居住環境における地域のつながりの特徴について考えること(120分) |
第10回 | 環境と災害に関する概論と全体議論/災害の特徴、災害による環境への影響、災害リスク認知、災害への備えと復興支援について解説 [事前学習]災害の特徴と災害がもたらす環境への影響について考えてくること(120分) [事後学習]災害による被害が深刻化してしまう事態に関わる人の心理的特徴とそのことへの対処について考えること(120分) |
第11回 | オフィス環境に関する概論と全体議論/労働環境の影響、オフィスの物理的環境、多様化するオフィス環境について解説 [事前学習]ホーソン実験がもたらした影響について考えてくること(120分) [事後学習]リモートワークの実情を踏まえ、自宅と職場を兼用する環境を作るうえでの注意点を考えること(120分) |
第12回 | 学び環境・高齢者環境に関する概論と全体議論/「行動場面」からみた学校、教室の物理的環境、環境圧力と環境適応能力からみた高齢者環境、ユニバーサルデザインについて解説 [事前学習]学び環境としての学校の特徴、居住環境としての高齢者環境の特徴について考えてくること(120分) [事後学習]学びの場としての学校に備わっているべき重要な環境にはどのようなものがあるかを考えること(120分) |
第13回 | 環境のデザイン①/アフォーダンス、誰のためのデザイン?、パターンランゲージのまちづくりへの応用について解説 [事前学習]身近なもの、場所、まちに見られるデザインの特徴について考えてくること(120分) [事後学習]物理的環境のデザインと社会的環境のデザインの関連について考えること(120分) |
第14回 | 環境のデザイン②/環境行動研究の方法、環境査定とPOEについて解説 [事前学習]構築された環境を査定する意義は何かを考えてくること(120分) [事後学習]構築された物理的環境や社会的環境に問題が見られたときの改善の方策について考えること(120分) |
第15回 | これまでの講義・発表内容の整理とまとめ [事前学習]これまでの講義・発表内容について復習しておくこと(120分) [事後学習]今後の自身の研究を考えるうえで、環境心理学の知見をどう生かせるかを熟考すること(120分) |
その他
教科書 |
とくに定めません。 講義の中で、必要に応じて資料等を配布します。
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
Cherulnik, P. D., Applications of Environment-Behavior Research: Case Studies and Analysis, Environment and Behavior Series, Cambridge University Press, 1993
羽生和紀 『環境心理学:人間と環境の調和のために』 ライブラリ 実践のための心理学5 サイエンス社 2008年 第2版
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成績評価の方法 及び基準 |
発表課題およびレポート(70%)、講義時の積極的な討議への参加態度(30%) |
質問への対応 | 講義後教室にて対応します。 |
研究室又は 連絡先 |
初回の講義で開示します。 |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
担当教員の専門は環境心理学で、構築環境(主に博物館・美術館)への利用者の評価等について研究してきました。本科目を通して、専門的な知識のない一般の人がどのように街を感じ行動しているのか、どのような都市空間が求められているのかについて一緒に考える機会になればと思います。また、各回の内容を体験できるような機会(小実験等)を設けることも考えていますので、積極的に取り組んでください。課題とリアクションペーパーを毎回提示します。 |