2020年 大学院理工学研究科 シラバス - 情報科学専攻
設置情報
科目名 | 情報科学特別講義 | ||
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設置学科 | 情報科学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 勢力・高梨 他 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 水曜1 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | K31A |
クラス |
概要
学修到達目標 | 21世紀、科学技術が私たちの生活の隅々まで関わってきた現在、世界はどのように変化し、私たちは何を考え、行動していくべきなのだろうか。 断片的で偏った情報があふれ、それらに翻弄されがちな時代だからこそ、人文社会系の諸科学が探究する問いと考察との対話を通じて、情報に着眼する力、情報の見えにくい関係性を構想し発見する力、多様・異質な情報をも正確に理解する力、それらを表現する論理力と語彙力などを鍛えることで、広い意味での教養を磨くことを目指す。 社会のリーダーとなるための基本的な能力を理解し、物事を多面的、批判的に捉えることができる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
それぞれの分野における専門教員によるオムニバス形式講義 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
授業中に各担当者から指示 |
授業計画
第1回 | (勢力)人間にとっての「合理性」の陥穽と行方 人間は非合理な本性をたずさえたまま、さまざまな技術を用いて「合理性」を探求する。あらゆる対象をモデル化し、計測不能なリスクすらある程度合理的に制御可能とみなして進む社会の行方と、「合理的」意思決定を下す際の陥穽と留意点について考察する。 |
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第2回 | (勢力) ゲームとしての制度の生成変化と21世紀の「つながり」のかたち 私たちの「よろこび」を促進し、「無力感」や「空虚感」を減らすために人間に可能な慣習や制度とは何で、そのような各種の慣習や制度への変化はどのように生じうるのだろうか。慣習や制度の生成と変化という問題を「ゲーム」という観点から考察し、21世紀における資本主義、仕事、幸福などのかたちについて探求する。 |
第3回 | (高梨)安全学を考える1 科学技術の進歩に伴い、現代社会における安全の問題は複雑かつ多岐にわたる問題に成長しており、人々は社会化した技術システムに不安を感じている。広範にわたる現代社会の安全問題に対処する方法としての「安全学」を概観する。 |
第4回 | (高梨)安全学を考える2 主に科学技術と法規制の問題を中心に、安全学的思考方法を考えていく。1回目の講義の内容に基づき、安全学の方法とその可能性と限界を考えていく。 |
第5回 | (柴山)教育メディアについて考える 筆、鉛筆、タブレット端末などの道具と思考形式の変容の歴史、メディア(写真、映像、レコーダー)による意識の形成とメディアの歴史的変遷などを踏まえながら検討していく。特に、デジタル教科書やタブレット端末の使用に関する諸問題を議論したい。 なお、事前に、情報処理学会などの理数系学会が示した「『デジタル教科書』推進に際してのチェックリストの提案と要望」をHPで確認し、その内容を整理しておくことが望ましい。 |
第6回 | (柴山)これからの学力像や人間像 情報化やデジタル化による観察力・洞察力・記録力・判断力・思考力など諸能力の外部化、また、人工知能の台頭などの状況を踏まえながら、これから求められる学力像や人間像について議論したい。 なお、事前に、文部科学省のHPで「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」や「小学校プログラミング教育の手引(第二版)」を確認し、それに関する自分の見解を整理しておくことが望ましい。 |
第7回 | (岸)星新一の世界1 文学も一種の文化現象である以上、人間や社会の変容を映し出すことになる。例えば、星新一のショートショートには、未来を予言した作品が少なくない。これらの作品は現代社会の諸問題を炙り出す契機となり得る。今回は星新一の作品を未来からの警告という形で読み解いていくことにしたい。 対象とする作品 「羽衣」「これからの出来事」 |
第8回 | (岸)星新一の世界2 科学技術の発達によって、現代を生きるわれわれの感受性も変化し、価値観も多様化している。科学が人間に何をもたらしうるのか、星新一の作品から考えてみたい。今回は人間のコミュニケーション能力や生命力に、どのような変化が起こりうるか、二つの作品を例に考察を加える。 対象とする作品 「肩の上の秘書」「冬の蝶」 |
第9回 | (相馬)いま経済物理学は何を考えているか?(マクロ経済編) 伝統的な経済学では,代表的なエージェント(個人や企業)の行動を詳細に研究し,それを相似拡大することによって,マクロ経済が理解できると考えられてきた.しかし,金融危機を境に,様々なエージェントがつながった複雑ネットワークとしてマクロ経済を理解する必要性が強調されている.今回の講義は,マクロ経済物理学とネットワーク科学の入門から始め,京コンピュータを使った金融危機シミュレーションまでを学ぶ. |
第10回 | (相馬)いま経済物理学は何を考えているか?(金融市場編) 経済学や金融工学では,株価の変動はランダム・ウォークに従うと考えられてきた.そして,この考え方に基づいて様々な金融商品が開発された.しかしその結果,金融危機が起こったことは記憶に新しい.今回の講義では,アルゴリズ・トレードの歴史や株価変動に潜む法則性(集合知の法則性)を学ぶ.そして,最新の複素主成分分析を用いて,株価のランダム相関と有意相関を分割(ノイズを除去)する方法を理解し,それを応用するところまでを学ぶ. |
第11回 | (天野)ロボット・AIと法(1) わが国ではロボットに関する法の研究は、まだはじまったばかりである。そのためロボットおよびその頭脳となりうるAIが人間に損害を与えた場合に、誰がどのような責任を負うべきなのかは、法的には明らかでないことも多い。そこで、外国の裁判例を参考に、ロボット・AIと法について考察する。 |
第12回 | (天野)ロボット・AIと法(2) 近年、AIは犯罪者の予測、企業の採用活動、金融機関の信用情報に活用され、AIによって個人が選別されるようになってきた。しかし、「AIはより多くのデータを吸収したほうが賢くなる」としたとき、憲法でプライバシーが保障され個人情報の収集に限界がある社会において、AIは信頼できるものとなりうるのであろうか。そこで、AIと日本国憲法の関係について考察する。 |
第13回 | (島村)クリティカル・シンキングの技術. 情報技術の高度に発展した現代において、情報を正確に理解し、慎重に吟味する技術(クリティカル・シンキングの技術)はますますその重要性を増している。今回は、こうした技術のコアにある「論証」という考え方に焦点を絞り、日常的言説の内に論証を読み取る技術、論証を分析・評価するための技術を訓練する。 |
第14回 | (石浜)現代の科学・物質文明が最優先する社会において啓蒙的理性の強権の下、私たちは人間として何を獲得し、また何を失ってしまったのか、何を大切にしなければならないかを、20世紀の哲学者ハイデガー等から学びたい。 |
第15回 | (石浜)そうした現代社会において私たちがこれからどのような社会をつくるべきか、そのためには何をし、優先すべきものは何かを、哲学者たちの様々な思索を例として考えてみたい。そこで授業に臨むに際して、前回問題提起となったハイデガーの技術論をしっかりと理解し、それをもとに今後に進むべき方向を自分なりに推察してほしい。 |
その他
教科書 |
必要に応じて資料やプリントの配布
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
必要に応じてプリント配布
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成績評価の方法 及び基準 |
各教員の課題に対するレポート(100%) |
質問への対応 | 歓迎 |
研究室又は 連絡先 |
一般教育・船橋研究室5号館532室(勢力、岸、島村)、542室(天野)、525・B(柴山)、 同1号館141・A (相馬) 勢力尚雅(seiriki.nobumasa@nihon-u.ac.jp ) 高梨俊一(tax@penta.ge.cst.nihon-u.ac.jp) 柴山英樹(shibayama.hideki at nihon-u.ac.jp) |
オフィスアワー |
水曜 船橋 15:00 ~ 16:00 柴山 525B研究室
水曜 船橋 12:20 ~ 13:00 勢力 532研究室
水曜 船橋 12:20 ~ 13:00 天野 542研究室
水曜 船橋 12:10 ~ 13:10 髙梨 5号館講師室
水曜 船橋 12:15 ~ 13:15 相馬 141A研究室
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学生への メッセージ |
世界を多角的に考え、問題意識を持ち論理的に考える力を養うことを望む |