2020年 大学院理工学研究科 シラバス - 物理学専攻
設置情報
科目名 | 磁気流体力学Ⅱ | ||
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設置学科 | 物理学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 長山 好夫 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 水曜1 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | M31B |
クラス |
概要
学修到達目標 | 核融合炉設計では不可欠な理想的電磁流体力学を、教科書「Jeffrey P. Freidberg "Ideal MHD"」に沿って学ぶ。教科書の分量が多いので、本筋ではない部分は端折る。 遠隔授業であるから、手元に教科書や参考書を置いて、じっくり式の導出をしてもらえればよい。偏微分方程式の山としか思えないMHDになじみが出てくるはず。完全に記憶する必要はないが、プラズマ物理の論文を読むときの最大のハードルであるMHDは克服できるはず。 |
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授業形態及び 授業方法 |
サーバー(CSTポータルII)にアップロードされた講義資料PDFとレポート問題を、授業日にダウンロードし、教科書と併せて読んでもらい、基本方程式や解を導出してもらう。 理解度チェックのために、重要事項についてレポート問題を解いて、翌授業日までに提出してもらう。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
遠隔授業であるから、手元に教科書や参考書を置いて、じっくり式の導出をしてもらえればよい。 予備知識:F. F. Chen(著), 内田 岱二郎 (訳)「プラズマ物理入門」と同等程度。電磁気学や偏微分方程式に慣れていること。 |
授業計画
第1回 | 理想的電磁流体力学(Ideal MHD)とは: マクスウェル方程式とボルツマン方程式から二流体運動方程式、ついで理想的電磁流体力学方程式を導出する。 |
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第2回 | 保存則 質量保存則、運動量保存則 エネルギー保存則 |
第3回 | ビリアル定理 トロイダル磁気閉じ込めの必要性。 |
第4回 | Grad-Shafranov方程式の導出 トーラスプラズマの平衡計算に必須のGrad-Shafranov方程式を導出する |
第5回 | 高アスペクト比トカマクの平衡 高アスペクト比による展開を利用して、Grad-Shafranov方程式の解析解を求める 真空磁場と接続することで、高アスペクト比トカマクの平衡解を求める それを利用して、平衡維持に必要な垂直磁場を求める |
第6回 | Grad-Shafranov方程式の解析解 ソロビエフ分布を利用して、非円形断面トカマクや球状トカマクの平衡の解析解を求める。 |
第7回 | 核融合炉概論 核融合研究の歴史をたどりながら、核融合発電炉実現可能性を論ずる。 理想的電磁流体力学がどのように核融合炉設計に役立つかが理解できるだろう |
第8回 | MHD不安定性の基本方程式 プラズマの微小変位が引き起こすエネルギー変化を、理想的電磁流体力学から導く |
第9回 | プラズマ表面および真空のエネルギー プラズマの微小変位が引き起こすエネルギー変化について、プラズマ内部だけでなく、プラズマ表面、真空中にたくわえられるエネルギーについて、調べる。 |
第10回 | 1次元プラズマにおけるMHD不安定性の判別 代表的な1次元磁気閉じ込めプラズマであるθピンチおよび、髙アスペクト比の極限であるスクリューピンチを例に、MHD不安定性の判別を論ずる |
第11回 | キンクモード 2大MHD不安定性のうち、キンクモードは1次元プラズマでも不安定化する。スクリューピンチや高アスペクト比の極限のトカマクについて、キンクモードを論じる |
第12回 | バルーニングモード もう一つの2大MHD不安定性であるバルーニングモードは、磁場の曲率がないと不安定化しない。高アスペクト比トカマクについて、バルーニングモードのエネルギー変化を論じる。 |
第13回 | バルーニングモード方程式の定式化 エネルギー積分から変分法により、バルーニングモード方程式を定式化する |
第14回 | バルーニングモードの解と第二安定化 バルーニングモード方程式の解と、安定・不安定の領域について論じる。さらに、髙βトカマクで重要な第二安定化についても論じる。 |
第15回 | 静電的ドリフト波 MHD不安定性のほか、核融合磁気閉じ込めの物理学のもう一つの主役は、乱流である。乱流の物理の基本である静電的ドリフト波について論じる |
その他
教科書 |
Jeffrey P. Freidberg, Ideal MHD, Cambridge University Press, 2014, 1 edition
核融合炉(プラズマ閉じ込め装置)の設計では不可欠な理想的電磁流体力学(Ideal MHD)の教科書の定番。前著の"Ideal magnetohydrodynamics"は1987年に出版され、絶版後5倍以上の高値が付いた人気教科書だった。本書は改訂版である。式の導出は丁寧で、英語も簡明である。
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
『「球状トカマクをベースとする核融合発電炉」』 技術報告 No.1298 電気学会 2014年
核融合炉概論および炉設計がコンパクトにまとめられている。
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成績評価の方法 及び基準 |
レポート点数の合計で評価する。特段の事情(教職、インターンシップ、病気)で締め切りまでにレポートが出せない場合は、締め切りで対応する。 |
質問への対応 | メールで対応する。 |
研究室又は 連絡先 |
7号館2階721B号室。 電子メール:nagayama.yoshio@nihon-u.ac.jp 内線:898 |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
核融合炉設計には理想的電磁流体力学(Ideal MHD)が不可欠です。Ideal MHDでも十分難しいのですが、この教科書はよくできているので、一緒に読んでいきましょう。偏微分方程式はとっつきにくいのですが、何度も書いていれば慣れてきます。式の導出を黒板で行いますので、必ず復習してください。抵抗性MHDや非線形MHDは扱いませんが、そのような難しい学問でも、Ideal MHDをマスターした後なら、随分楽に勉強できると思います。 |