2022年 大学院理工学研究科 シラバス - 量子理工学専攻
設置情報
科目名 |
統計力学Ⅱ
臨界現象と繰り込み群
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設置学科 | 量子理工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 大谷 聡 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 金曜1 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | O51B |
クラス |
概要
学修到達目標 | 2次相転移の臨界現象と繰り込み群について学ぶ.はじめに平均場理論で臨界現象の普遍性を概観した後,Wilsonの繰り込み群を導入する.講義の後半ではイプシロン展開を用いて臨界指数の摂動計算を行う.臨界現象の普遍性を繰り込み群の観点から理解することを目標とする. |
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授業形態及び 授業方法 |
「対面授業」 板書による講義形式で行う. |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
熱力学・統計力学の基礎を修得していることが望ましい. |
授業計画
第1回 | 講義の概観 これから学ぶ臨界現象の普遍性について概観する. 【事前学習】熱力学・統計力学の基礎について復習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
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第2回 | 流体の臨界現象1 2体相互作用するN粒子系を正準分布で解析する.平均場近似を用いるとvan der Waals状態方程式が得られることを学ぶ. 【事前学習】van der Waals状態方程式について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第3回 | 流体の臨界現象2 van der Waals状態方程式を用いて気液相転移の臨界現象を調べる.臨界点近傍での応答関数の振る舞いおよび臨界指数について学ぶ. 【事前学習】定積比熱と等温圧縮率について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第4回 | 強磁性体の臨界現象1 Ising模型を導入する.応答関数および平均場近似を用いた分配関数の評価法について学ぶ. 【事前学習】Ising模型について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第5回 | 強磁性体の臨界現象2 Ising模型の平均場近似を用いて強磁性相転移の臨界現象を調べる.臨界指数がvan der Waals流体の臨界指数と完全に一致することを学ぶ. 【事前学習】自発磁化,定磁場比熱,および等温帯磁率について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】レポート課題を与えるのでそれを解くこと.解答例はレポート提出後に配布する.(120分) |
第6回 | 連成振動子から場の理論へ 場の理論の簡単な導入.連成振動子の連続極限を取るとスカラー場の理論が得られることを学ぶ. 【事前学習】古典力学の連成振動子について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第7回 | Ginzburg-Landau理論1 秩序変数と対称性に基づくGinzburg-Landauの現象論を導入する.これ以降,場の理論を用いる. 【事前学習】Ising模型の平均場近似について復習しておくこと.(120分) 【事後学習】レポート課題を与えるのでそれを解くこと.解答例はレポート提出後に配布する.(120分) |
第8回 | Ginzburg-Landau理論2 O(n)線形シグマ模型の導入.鞍点近似を用いた分配関数の評価法および臨界次元について学ぶ. 【事前学習】鞍点法について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第9回 | Ginzburg-Landau理論3 平均場近似の適用可能性を判定するGinzburgの判定基準について学ぶ. 【事前学習】臨界次元について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】レポート課題を与えるのでそれを解くこと.解答例はレポート提出後に配布する.(120分) |
第10回 | Wilsonの繰り込み群1 理論空間と繰り込み群変換を導入する.繰り込み群変換は「高運動量モードの積分」「スケール変換」「場の再規格化」の3つからなることを学ぶ. 【事前学習】繰り込み群変換について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第11回 | Wilsonの繰り込み群2 繰り込み群方程式を導入する.繰り込み群変換が分配関数を不変に保つことの帰結として,相関関数は繰り込み群方程式と呼ばれる方程式を満たすことを学ぶ. 【事前学習】繰り込み群方程式について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第12回 | Wilsonの繰り込み群3 繰り込み群のフロー方程式を導入する.繰り込み群変換の固定点の存在を仮定すると,固定点近傍の理論の振る舞いは,固定点近傍で線形化された繰り込み群変換の固有値・固有ベクトルで完全に決定されることを学ぶ. 【事前学習】繰り込み群のフロー方程式について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第13回 | Wilsonの繰り込み群4 スケーリング則を導出する.一旦固定点の存在を仮定すると,臨界現象の普遍性は導かれることを学ぶ. 【事前学習】スケーリング則について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】レポート課題を与えるのでそれを解くこと.解答例はレポート提出後に配布する.(120分) |
第14回 | イプシロン展開1 Ising模型と同じ臨界現象を示すファイ4乗模型を解析する.Gauss固定点周りの摂動論からWilson-Fisher固定点での臨界指数を求める. 【事前学習】ファイ4乗模型について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
第15回 | イプシロン展開2 引き続きファイ4乗模型の摂動計算を行う. 【事前学習】Wilson-Fisher固定点について予習しておくこと.(120分) 【事後学習】講義ノート等を参考に講義内容を復習しておくこと.(120分) |
その他
教科書 |
特に指定しない.
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
西森秀稔 『相転移・臨界現象の統計物理学』 新物理学シリーズ 培風館 2005年
高橋和孝,西森秀稔 『相転移・臨界現象とくりこみ群』 丸善出版 2017年
園田英徳 『今度こそわかるくりこみ理論』 今度こそわかるシリーズ 講談社 2014年
上2つは統計物理学の教科書.最後の1つは繰り込み群の教科書.
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成績評価の方法 及び基準 |
計4つのレポート課題で成績評価を行う.試験は行わない.レポート課題は提出締め切り後に解答例を配布する. |
質問への対応 | 授業中・授業外に関わらずいつでも受け付ける.メールでも良い. |
研究室又は 連絡先 |
研究室: 駿河台校舎8号館2階823D Email: ohya.satoshi@nihon-u.ac.jp Phone: 03-3259-0790 URL: http://aries.phys.cst.nihon-u.ac.jp/~ohya/ |
オフィスアワー |
水曜 駿河台 17:00 ~ 18:00 事前にメール等で連絡を入れるのが望ましい
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学生への メッセージ |
繰り込み群は統計物理だけでなく素粒子論でも登場する重要な概念です.この授業では2次相転移の臨界現象を題材に,1970年代前半にKenneth G. Wilsonによって創始された繰り込み群を出来るだけ分かり易く解説します.理論物理に興味のある全ての学生を歓迎します. |