2023年 理工学部 シラバス - 機械工学科
設置情報
科目名 | 内燃機関 | ||
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設置学科 | 機械工学科 | 学年 | 3年 |
担当者 | 飯島 晃良 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 月曜2 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | F12O |
クラス | |||
履修系統図 | 履修系統図の確認 | ||
その他 | 実務経験のある教員による授業科目 |
概要
学修到達目標 | 内燃機関は,自動車をはじめとして様々な動力源で広く利用されている.近年は,エネルギー・地球環境問題やグローバルな技術開発競争を背景とし,高効率化(低燃費化),排気のクリーン化,出力性能,高い信頼性を低コストで実現すること等が求められ,今なお進化の途中にある.本講義では,主に自動車用エンジンを題材に,その原理,基礎理論,性能向上法,高効率化手法,燃焼,排気,エネルギー・環境問題を踏まえた最新動向などを講義する.具体的な学習目標を以下に記す. ①内燃機関の熱力学的取り扱いを理解し,熱力学的な性能解析ができる。 ②内燃機関の作動原理と構造を理解し,説明できる。 ③内燃機関の出力・燃費・排ガス性能特性を,機械工学等の基礎理論に基づき理解し,それらの改善方法を説明できる。 ④ガソリン機関及びディーゼル機関の燃焼を理解し,主要な相違点とそれに伴う利点や課題を説明できる。 本授業科目はDP3・5及びCP3・5に該当しています. |
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授業形態及び 授業方法 |
【対面授業】 板書及びスライドを用いた講義形式で行う.また,適宜学会等で発表されている内燃機関の最新の研究成果や技術,今後の研究が必要な未解決事項,世界的な研究開発動向などを紹介する.その際,実務経験を持つ担当教員は,内燃機関開発や実装に関する社会での実例など,この科目で学ぶ内容がどのように応用させるのかを説明する. |
履修条件 | 熱力学Ⅰの単位を修得していることが望ましい. 熱力学Ⅱの単位を修得していることが望ましい. |
授業計画
第1回 | 内燃機関の基本・定義・原理・社会的役割 【キーワード】内燃機関と環境問題,熱機関,内燃機関と外燃機関,容積型と速度型,ガソリン機関とディーゼル機関,4ストローク機関と2ストローク機関,ロータリーエンジン 【事前学習】シラバスをもとに内燃機関の講義の内容を熟読し、熱力学Ⅰおよび熱力学Ⅱのガスサイクルの内容を復習すること。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、内燃機関の分類・構造・動作原理・社会的役割を振り返り、今後の社会に対して求められる課題に関する自分の意見を考える。(120分) |
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第2回 | 内燃機関の熱力学 【キーワード】オットーサイクル,ディーゼルサイクル,サバテサイクル,アトキンソンサイクル,ミラーサイクル,理論熱効率,理論平均有効圧力 【事前学習】熱力学Ⅰおよび熱力学Ⅱの内容を含めて、オットーサイクル、ディーゼルサイクル、サバテサイクルを復習すること。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、内燃機関の理論熱効率を熱力学的に向上する方法を考える。(120分) |
第3回 | 内燃機関の性能の表し方と計算法(その1) 【キーワード】トルク,出力,平均有効圧力,図示仕事と正味仕事,熱効率と燃料消費率 【事前学習】エンジンの性能を表す指標として、軸トルク、出力、平均有効圧力、熱効率の概念を予習しておく。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、内燃機関の各種性能計算の方法を振り返る。(120分) |
第4回 | 内燃機関の性能の表し方と計算法(その2) 【キーワード】理論サイクル,指圧線図と熱力学的解析,充填効率と体積効率 【事前学習】エンジンの理論サイクルとp-V線図の関係を予習しておく。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、理論的なp-V線図と、指圧線図の相違点が、どのような物理的意味を持つのかを考える。(120分) |
第5回 | 内燃機関の高出力化 【キーワード】出力の支配因子,体積効率・充填効率とその向上法, エンジンの吸排気系,バルブタイミング,過給,出力の向上法 【事前学習】出力、体積効率、充填効率の定義と算出法を確認したうえで、体積効率や充填効率がなぜ、どのように出力に影響するのかを考察する。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、出力の支配因子を整理する。(120分) |
第6回 | 内燃機関の高効率化・低燃費化(その1) 【キーワード】熱効率への支配因子,内燃機関の諸損失,高圧縮比化とノッキング,希薄燃焼,排ガス再循環(EGR) 【事前学習】理論サイクルの熱効率特性を事前学習しておく。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、実際のエンジンの熱効率を支配している因子を振り返る。(120分) |
第7回 | 内燃機関の高効率化・低燃費化(その2) 【キーワード】冷却損失,ポンピングロス,摩擦損失,実際の高効率化技術 【事前学習】エンジンの熱効率支配因子に基づき、冷却損失、ポンピング損失がどのように影響するのかを考える。また、具体的な熱効率化技術について、それらの技術がなぜ有効なのかを理論的に考察する。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、熱効率の向上方法を振り返る。(120分) |
第8回 | 内燃機関の燃料 【キーワード】石油精製とガソリン・軽油,オクタン価とセタン価,炭化水素の種類と分子構造,代替燃料 【事前学習】内燃機関に用いられている主な燃料の種類・特性・生成法を事前学習しておく。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、ガソリン、軽油の違いを、オクタン価、セタン価、自着火特性との関係を振り返る。(120分) |
第9回 | 燃焼の基礎 【キーワード】燃焼反応,空燃比・当量比・空気過剰率,予混合燃焼と拡散燃焼,火炎温度 【事前学習】燃焼用語として、空燃比、当量比、空気過剰率、予混合燃焼と拡散燃焼の意味を理解しておく。(120分) 【事後学習】ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの燃焼上の特徴を振り返る。(120分) |
第10回 | ガソリン機関の正常燃焼 【キーワード】点火過程,予混合火炎伝播,燃焼温度,ガス流動と乱流火炎伝播速度,希薄成層燃焼,筒内直噴エンジン 【事前学習】正常燃焼と異常燃焼の違いを調べ、自分なりの考察を行う。(120分) 【事後学習】点火、火炎形成、火炎伝播の一連の現象に対して、ガス流動や乱れがどのような影響をもたらすのかを考える。(120分) |
第11回 | ガソリン機関の異常燃焼と予混合圧縮着火(HCCI)燃焼 【キーワード】ノッキング,低温酸化反応と自着火,燃料分子構造とオクタン価,運転状態の影響 【事前学習】異常燃焼にはどのような種類があるのかを調べ、自分なりの比較分類を行う。また、予混合圧縮着火とは何かを調べる。(120分) 【事後学習】分子構造とオクタン価の関係によって、ノッキングにどのような影響を及ぼすのかを考える。(120分) |
第12回 | ディーゼル機関の燃焼 【キーワード】ディーゼル噴霧の着火・燃焼過程,セタン価,ディーゼルノック,高圧噴射(コモンレール),NOxとPM排出のトレードオフ 【事前学習】ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの相違点をまとめる。(120分) 【事後学習】ディーゼルの着火・燃焼過程がガソリンエンジンのそれとはどのように異なるのかを考え、ディーゼルエンジンの利点と課題を説明できるようにする。(120分) |
第13回 | 内燃機関の排気のクリーン化 【キーワード】CO・HC・NO・PMの発生機構,燃焼による低減法(EGR,予混合化,過給),後処理による浄化法(三元触媒,NOx触媒,DPF),排ガス規制 【事前学習】CO、HC、NO、PMとは何か、また、それらが環境や人体にどのような影響をもたらすのかを調べる。(120分) 【事後学習】有害排出ガスの生成メカニズムに基づき、有効な排ガスクリーン化手法を説明できるようにする。(120分) |
第14回 | 内燃機関に関する研究開発トピックス 【事前学習】今後のパワートレイン開発における内燃機関の役割、課題を調べ、自身の考えを整理しておく。(120分) 【事後学習】内燃機関をはじめとしたパワートレイン研究開発の展望について、社会的背景を含めて整理する。(120分) |
第15回 | 平常試験およびその解説 【事前学習】これまでの講義で学んだ内容を整理し,各項目を体系的に考える。(120分) 【事後学習】平常試験の結果に基づき,内燃機関の科目の内容を総合的に振り返る。(120分) |
その他
教科書 |
飯島晃良,吉田幸司 『基礎から学ぶ内燃機関』 森北出版 2022年 第1版
内燃機関の基本原理とその応用技術に関するテキストである。講義は,基本的にこのテキストに沿って行う。授業回によっては,適宜補足するプリントを配布する。そのほか,各自,理解の助けや興味を広げるために,自身に合った参考書を副読本として用いることを勧める(以下を参照).
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参考書 |
飯島晃良 『基礎から学ぶ高効率エンジンの理論と実際』 グランプリ出版 2018年 第1版
村中重夫 編著 『新訂・自動車用ガソリンエンジン』 養賢堂 2011年 第1版
鈴木孝幸 『ディーゼルエンジンの徹底研究』 グランプリ出版 2012年 第1版
古濱庄一 『内燃機関』 東京電機大学出版局 2011年 第1版
村山 正, 常本 秀幸, 小川 英之 『エンジン工学』 東京電機大学出版局 2020年
秋濱一弘,津江光洋,友田晃利,野村浩司,松村恵理子 『最新内燃機関 改訂版』 朝倉書店 2021年
John B. Heywood, Internal Combustion Engine Fundamentals, 2nd Edition, McGraw-Hill Education, 2018, 2 edition
石川 義和 『自動車用ガソリンエンジンの設計』 グランプリ出版 2015年
村瀬栄一 他 『革新的燃焼技術による高効率内燃機関開発最前線』 NTS 2015年
粟野 誠一 『内燃機関工学』 山海堂 1958年
長尾不二夫 『内燃機関講義 上巻 第3次改著』 養賢堂 1994年
C. F. Taylor 『The Internal Combustion Engine in Theory and Practice: Vol. 1 - 2nd Edition, Revised (Thermodynamics, Fluid Flow, Performance)』 The MIT Press 1985年
C. F. Taylor 『Internal Combustion Engine in Theory and Practice: Vol. 2 - 2nd Edition, Revised (Combustion, Fuels, Materials, Design) 』 The MIT Press 1985年
GP企画センター編 『増補二訂 自動車用語辞典』 グランプリ出版 2016年
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成績評価の方法 及び基準 |
目標①②③④に対して以下の方法で達成度を評価し,100点満点に換算して60点以上を目標が達成されたものと評価する. 【評価方法】演習等の課題40%,理解度確認試験60% |
質問への対応 | オフィスアワーを含め,随時質問を受けつける. |
研究室又は 連絡先 |
駿河台校舎 タワー・スコラS1704室 iijima.akira@nihon-u.ac.jp |
オフィスアワー |
月曜 駿河台 12:10 ~ 13:20 タワー・スコラS1704室
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学生への メッセージ |
内燃機関が誕生してから140年以上が経過し,この分野は成熟したように感じるかもしれない.しかし,内燃機関は誕生以来,出力向上,小型化,高効率化,クリーン化,信頼性,低コスト,低炭素化という社会からの厳しい要求を克服し,今なお進化を続けている.内燃機関を通じて,これまでに学んできた機械工学の基礎科目を有機的に関連付け,応用する術を学ぶとともに,化学,環境,エネルギーなど,様々な分野への興味の視野を広げてほしい. |