2023年 短期大学部 シラバス - 総合教育科目・補充教育科目
設置情報
科目名 | 現代物理学 | ||
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設置学科 | 一般教育 | 学年 | 1年 |
担当者 | 田中 俊成 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 木曜6 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | N46L |
クラス | |||
履修系統図 | 履修系統図の確認 | ||
その他 | 実務経験のある教員による授業科目 |
概要
学修到達目標 | 現代の物理学においては、個人レベルで比較的小規模な予算・設備で実施する研究分野に加え、所謂「巨大科学」と呼ばれる大型粒子加速器、大型望遠鏡、宇宙開発、宇宙利用のように莫大な国家予算や研究者・技術者の投入と国際的な協力なしでは実現が難しい研究分野があり、それらの研究設備の利用も少人数ではなく、多くの国際的な研究者の共同により研究が行われている。本講義においては、これら巨大科学分野の学術的基礎と最近の成果について学ぶ。そして 1.古典天文学から最新の天文学に至る歴史と成果の体系的知識を得る 2.宇宙ロケットの開発の歴史と到達点を知り,宇宙探査機や人工衛星等により得られた太陽系や宇宙全体に関する総合的な知識を得る 3.粒子加速器の原理を理解し、その発展の歴史と成果、また現在の大型加速器の到達点を知る 以上を通して、宇宙の中の知的存在である人類の科学的知見の蓄積の歴史と発展を学び、さらに地球環境保全の重要性について深く認識し広めることのできる知的基盤を養うことを目標とする。講義で得る知識や認識の多くは天文学に関連している。 本授業科目はDP1及びCP1に該当しています。 科目ナンバリング:LLiN-112 |
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授業形態及び 授業方法 |
オンデマンド型ビデオ授業を行う。各ビデオプログラムの長さは概ね40~60分程度で、1回の授業あたり1つまたは2つのビデオプログラムを、全体で60~90分となるよう編集する。 まず、天文学に関連した講義として、観測的天文学の基礎である時刻系と座標系の定義を解説し、天体望遠鏡における天体導入に関わる天体座標計算の詳細について、望遠鏡制御ソフトウエアを開発し深宇宙天体撮影用に望遠鏡を利用してきた経験に基づいて解説する。続いて、実際に天体望遠鏡を日常的に利用している立場から、各種天体望遠鏡の原理から現在の大型望遠鏡に至る天体望遠鏡発達の歴史とその架台の構造について解説する。こうした観測手段による成果を含め、天体の運行・天文現象・天体観測の歴史的発展と宇宙の広がりに関する認識の科学的発展について講義を行う。 さらに、宇宙探査に貢献してきた宇宙ロケット・宇宙探査機・人工衛星の開発の歴史と、太陽系及び太陽系外の宇宙に関する人類の認識の到達点を解説する。 最後のテーマとして、粒子加速器の発明とその技術的要素を含めた発展の歴史を概観し、加速器物理学分野の専門家として電子線形加速器の設計・建設・運用に携わった経験に基づき、線形加速器と円形加速器に分類して現代の大型粒子加速器の構造の詳細とそれらを用いた科学的研究成果を簡単に紹介する。 ビデオでは,大部分パワーポイントを用い講義を行う。また主として関連する多くの画像を示しながら講義を行う。 概ね毎回のビデオ講義について、ビデオ中で解説を行った内容に沿った簡単な質問を設ける。質問への回答はオンラインで行うこととする。オンデマンド授業であることを考慮し、いずれの質問も回答期限は期末に提出するレポートの提出期限と同様に、期末とする。期末レポートの課題と提出期限については第1回目の講義の際に説明する。 |
履修条件 | 粒子加速器や天文学、宇宙開発のような巨大科学に興味があり、物理学の基礎的科目を履修済みまたは履修中であることが望ましい。また、天体の運行と座標計算に関して学ぶ際には代数学と幾何学の基礎的知識があることが、理解を深める上で望ましい。 |
授業計画
第1回 | 『科目概要』 授業の進め方の説明を受け、各授業回で行われる講義の内容の概要について説明を受けることで関心を持つ。 【事前学習】シラバスの内容を確認の上、あらかじめ巨大科学に関し興味を持った事柄を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
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第2回 | 『天体観測における時刻・座標系』 天体観測に必要な、時刻系と地球の自転と公転に基づく赤道座標系について理解し、地球の運動に伴う天体の位置変化の基本的原理と、三次元空間における座標回転行列を多用した天体位置計算法について学ぶ。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第3回 | 『太陽系天体の座標系・暦と天体軌道要素』 太陽系天体の位置計算に必要な、地球の公転面に基づく黄道座標系について理解する。さらに、天体運行の暦と、天体力学に基づく惑星等の軌道要素から天体位置を計算するケプラー方程式の数値解法について学ぶ。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第4回 | 『日食と月食及びそれらの周期性』 太陽、地球、月の相対的位置に基づき生じる日食・月食という天文現象を理解し、それらに存在する周期性の原理を学ぶ。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第5回 | 『様々な望遠鏡と架台の原理・使い方』 反射望遠鏡,屈折望遠鏡とそれらの様々な架台の原理と使い方を理解し、最後に大型望遠鏡計画、宇宙望遠鏡計画について学ぶ。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第6回 | 『天体までの距離の測定法とその歴史的発展』 天体までの距離の認識と測定方法の発展に焦点を当て天文学上の発見の歴史を学び、距離に応じた測定方法の違いと相互のつながり、さらに宇宙の広がりを理解する。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第7回 | 『宇宙論と銀河・恒星の形成』 インフレーション宇宙、ビックバン、宇宙マイクロ波背景放射などの宇宙史、宇宙の進化に関する現代天文学の到達点について学ぶ。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第8回 | 『太陽と太陽系の様々な天体』 最も身近な恒星である太陽と、太陽系の惑星をはじめ、流星、隕石、彗星、小惑星など様々な天体及び天文現象について学び、人類の生存と地球環境にこれらが及ぼす可能性のある影響について理解する。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第9回 | 『惑星形成理論と太陽系外惑星』 近年多くの太陽系外惑星の発見が報告されていることから、太陽系外惑星の発見方法について学び、太陽系の形成理論とこれまでに発見されている太陽系外惑星の特徴との差異について理解する。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第10回 | 『宇宙ロケット開発の歴史と月面探査』 宇宙ロケットの原理、宇宙ロケット開発と人工衛星打ち上げの歴史について学び、月面探査の歴史と現状を理解する。 【事前学習】授業のテーマに関わる最近のニュースを調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第11回 | 『太陽及び太陽系探査』 太陽観測衛星、惑星探査機等の開発・打上げの歴史と、主に惑星探査の成果について学ぶ。 【事前学習】授業のテーマに関わる最近のニュースを調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第12回 | 『粒子加速器の原理と歴史的発展』 19世紀末にX線の発見に至った陰極線管に始まる、粒子加速の原理とその発展に基づく様々な粒子加速器の発明と、高エネルギー粒子加速器までの大型化と高エネルギー化の歴史を概観する。この中で、加速する粒子の種類により加速方法の違いがあり、加速器の種類もそれに基づき様々であることとそれらの原理の違いを理解する。さらに様々な科学・技術分野、医療分野、産業分野における加速器の有用性を理解する。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第13回 | 『線形加速器について』 粒子加速器の多くは、荷電粒子の加速原理により大きく線形加速器と円形加速器に分類される。このうち、線形加速器の大部分は大電力高周波を用いることから、高周波線形加速器の構成要素と加速のより詳細な振舞いについて、主に電磁気学と特殊相対性理論の基礎的知識の拡張により理解する。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第14回 | 『円形加速器について』 線形加速器に続き、円形加速器の加速原理と構成要素についてより詳しい解説を基に学び、線形加速器との違いとその特徴を理解する。現在の素粒子物理学の研究に用いられる大型高エネルギー加速器は、シンクロトロン加速と呼ばれる加速方法を用いた円形加速器が主流である。ここで粒子加速の安定性の原理である位相振動とベータトロン振動について学ぶ。大型加速器は国際的な協力の下で建設・利用が行われており、さらに超高エネルギー粒子加速を目指した加速器の建設に向けた国際的な動向についても学ぶ。 【事前学習】授業のテーマに関わる科学的知識を調べておくこと。(120分) 【事後学習】講義内容を復習し理解を深めること。(120分) |
第15回 | 『本授業のまとめ』 第14回までに行った授業内容を振り返りその要点を復習する。またレポート課題の再確認を行う。 【事前学習】提出レポートをまとめる準備を進めること。(120分) 【事後学習】自らのレポート課題に関わる授業内容を復習し理解を深めること。(120分) |
その他
教科書 |
教科書は指定しません.
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参考書 |
大谷栄治・長谷川昭・花輪公雄 編集,佐々木晶・土`山明・笠羽康正・大竹真紀子 著 『太陽・惑星系と地球』 太陽・惑星系と地球(現代地球科学入門シリーズ 全16巻【1】巻) 共立出版 2019年 第1版
『シリーズ現代の天文学(第1巻ー第17巻)』 日本評論社 2018年 第2版
長沢 工 『天体の位置計算 増補版』 天体の位置計算 増補版 知人書館 1985年 第1版
日本加速器学会編 『加速器ハンドブック』 加速器ハンドブック 丸善出版 2018年 第1版
多くの加速器研究者・技術者による加速器科学・技術を網羅した最新の知識が収められている。
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成績評価の方法 及び基準 |
毎回のオンデマンド授業の視聴(出席)と視聴に基づく各授業の質問への回答、さらに期末に課すレポート提出が必須です。成績は、視聴状況・質問への回答と提出されたレポートの査読に基づき総合的に評価します。授業内容には当然一般常識も含みますが、レポートは個人的な感想の記述や一般常識の詳述ではなく、授業内容を基に自ら発展的に学習した知識を、参考文献を挙げてまとめてあること、また文章構成・文法・誤字脱字の有無等を自らチェックし十分推敲を行ったレポートであることを重視します。 ※理解度確認テストは実施しません。 |
質問への対応 | 電子メールと研究室での面談にて対応します。 |
研究室又は 連絡先 |
船橋校舎物理実験B棟2階 047-469-5974(直通)または047-469-5489(事務室) tanaka@lebra.nihon-u.ac.jp |
オフィスアワー |
火曜 船橋 13:00 ~ 15:00
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学生への メッセージ |
巨大科学と言われる大型加速器、大型望遠鏡、宇宙ロケットの利用は,莫大な予算と国際的な多くの研究者・技術者の協力により成り立っており、人類の知的フロンティアを開拓するうえで常に重要な役割を果たしています。加速器とは、天文学とは、宇宙開発とは、と自ら興味と関心を持って学び理解することで、これらの啓蒙に貢献できるよう成長することを期待します。 -------------------------------------------------------------------- 【前年度「現代物理学」成績分布状況】履修者数111名 S:11名(12%)、A:33名(38%)、B:35名(40%)、C:9名(10%)、D:0名(0%)、E:23名 |