2023年 大学院理工学研究科 シラバス - 航空宇宙工学専攻
設置情報
科目名 | 極限環境材料学 | ||
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設置学科 | 航空宇宙工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 奥山 圭一 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 水曜2 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | H32A |
クラス | |||
その他 | 実務経験のある教員による授業科目 |
概要
学修到達目標 | 1. 材料内部に発生する応力が許容応力を逸脱し,材料が破壊に至らないように潜在する課題を抽出し,それに対処できる構想力,問題設定能力を習得する. 2. ロケット打上げ時の振動・衝撃に加え,微小重力,極真空,宇宙黒体冷却,太陽光加熱,熱サイクル,紫外線や宇宙放射線照射などの宇宙環境を理解する. 3. 金星や火星,タイタンなどの大気を持った惑星環境を理解する. 4. 上記1.から3.の理解に基づいて,特殊環境下でも目的の性能を発揮できる材料を設計できる力を養う. |
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授業形態及び 授業方法 |
・実務教員による授業 太陽系には金星や火星,タイタンなどの大気を持った惑星や衛星が多数存在している.例えば,金星は二酸化炭素を主成分とする濃い大気を持ち,地表面の大気圧は約9.3MPaである.強烈な温室効果によって,金星地表は約450℃に達すると考えられている.一方,火星の大気は金星と同様に二酸化炭素が主成分であるものの,その地表面の大気圧は約0.8KPaであり,また温度は約‐50℃である.金星や火星の環境は,地球と大きく異なる.ここでは,このような惑星環境に加え,宇宙空間などの特殊環境で使用できる材料とその特徴や応用などを講義する. ・教科書に従って,板書による対面授業を基本として行う. |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
熱力,工力,流力,材力に加え,航空宇宙材料,宇宙工学を学習していることが望ましい. 最も大切なことは,日本,米国,欧州,インド,ロシア(旧ソ連),中国などが行った月・惑星探査や深宇宙探査に関心を持っていること. |
授業計画
第1回 | 【宇宙環境】 微小重力,超高真空,大きな温度差,宇宙放射線など過酷な宇宙空間や,地球とは全く異なる金星や火星,タイタンなどの惑星・衛星環境を概観する. |
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第2回 | 【ロケット打上げ時の機械的環境と材料】 エンジン推力がもたらす機軸方向の加速度,エンジン噴流によるランダム音響振動,衛星分離のための火工品爆発時の衝撃など様々な機械的環境と,これに耐荷できる材料やロケット構造について講義する. |
第3回 | 【微小重力環境と材料(その1)】 微小重力では物体の重量はほぼゼロとなる.このような環境下で機能する構造を考える前に,地球重力下および火星重力下で荷重を作用させた材料内部の応力発生状態を考察する. |
第4回 | 【微小重力環境と材料(その2)】 先週学習した知見に基づいて,微小重力環境下で荷重が作用した材料内部の応力発生状態を考察する. |
第5回 | 【超高真空と材料(その1)】 超高真空環境下において,材料表面ではガス吸着層が消失し,また材料内部では揮発成分が気化することで材料が減肉する.この現象を概観する. |
第6回 | 【超高真空と材料(その2)】 超高真空環境下において,金属材料,無機材料および有機材料の気化現象を説明し,これによる機械的特性の劣化について講義する. |
第7回 | 【超高真空と材料(その3)】 スペースシャトルや国際宇宙ステーションなど人が搭乗する宇宙機は巨大な密閉容器である.このような宇宙空間で使用できる密閉容器の材料や構造について講義する. |
第8回 | 【中間テスト】 第1回から第7回までの学習内容の理解程度について試験する. |
第9回 | 【粒子衝突衝撃と材料】 宇宙空間を高速で飛翔する粒子には,原子やイオン,宇宙塵や隕石,宇宙ゴミ(スペースデブリ)などがある.これらが材料に衝突するとスパッタリング,エロージョンまた貫徹などが生じ,機械的特性が劣化する.これを概観する. |
第10回 | 【宇宙放射線と材料(その1)】 宇宙放射線は太陽放射線や宇宙線などから成り,最も有害な太陽放射線は紫外線とX線である.これらが有機材料に照射された場合,ポリマーの鎖状構造が分断され,機械的特性が劣化する.宇宙放射線が材料に与える悪影響について講義する. |
第11回 | 【宇宙放射線と材料(その2)】 宇宙放射線が,金属材料,無機材料,有機材料に照射された場合の材料劣化について具体的に講義する. |
第12回 | 【惑星などの特殊環境と材料】 金星,火星やタイタンといった地球とは全く異なる環境,さらにこの環境下で探査機を長期間使用するための材料設計の考え方を講義する. |
第13回 | 【宇宙往還と材料(その1)】 大気を持った惑星や衛星に宇宙機が突入する際,宇宙機の外表面は強烈な空力加熱に曝される.この加熱現象について講義する. |
第14回 | 【宇宙往還と材料(その2)】 大気突入環境は地上装置で完全に模擬できないので,往還機設計は解析で行わなければならない.この解析モデルの妥当性は地上装置で評価しなければならず,このパラドックス問題を解く手法について講義する.また,宇宙往還機に艤装できる熱防御材の設計思想や基本性能について講義する. |
第15回 | 【期末テスト】 第9回から第14回までの学習内容の理解程度について試験する. |
その他
教科書 |
適宜,講義用資料を配布する.
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
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成績評価の方法 及び基準 |
成績評価は中間試験(中間演習)と期末試験(まとめ)で70%から80%,平常点等(宿題など)で30%から20%として利用して行う. |
質問への対応 | 随時,メールにて受け付けています. |
研究室又は 連絡先 |
研究室:327B室 E-mail:okuyama.keiichi@nihon-u.ac.jp |
オフィスアワー |
月曜 船橋 17:00 ~ 19:00
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学生への メッセージ |