2024年 大学院理工学研究科 シラバス - 電気工学専攻
設置情報
科目名 | 物性科学特論 | ||
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設置学科 | 電気工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 鈴木 薫 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 火曜3 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | I23A |
クラス |
概要
学修到達目標 | 分子物性科学の基礎と応用研究の先端を理解し、分子構造や結晶の幾何学について学修することを目標とする。具体的な事例として、炭素系材料ではグラフェン・ダイヤモンド・ダイヤモンド状炭素・フラーレン・カーボンナノチューブなど、ソフトマターではコロイド・プラズモンや液晶及び高分子の有機導体・有機超伝導体・有機半導体・有機トランジスタ・有機電界発光素子・有機太陽電池・有機圧電/焦電素子・有機磁性体など、イオン液体、分子構造解析、分子シミュレーションなどについて、基礎知識との結びつきを明確にして、応用技術に対応できる識見を得て説明できる能力を身に着け、諸量を計算することができる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
毎回に設定された題目について対面授業により講義と輪講を行う。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
【事前学修】「講義の資料 I23B」を読み、理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考書や参考文献などを検索して理解する。 |
授業計画
第1回 | ソフトマターと分子構造:人間が有史以来利用している物質の多くは金属やセラミック等の「ハードマター」と高分子や液晶等の「ソフトマター」である。両者の違いを知るために、分子のミクロ構造と物性を理解し、共有結合や二原子分子・イオン結合・多原子分子・二重結合・金属結合・ファンデルワールス結合・水素結合・電荷移動による結合などの概要について学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.1ソフトマターと分子構造を読み、理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
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第2回 | 分子状態の幾何学:物質は温度や圧力によって、気体・液体・固体へと状態が変化する。単分子や多分子において、気体や液体状態で分子は自由に移動できるが、ハードマターの固体では分子間力が働いているため規則的に配列して結晶状態になっていることが多い。ソフトマターでは、原子スケールからナノ・マクロスケールに至る数層の階層構造を持っており、熱力学的な観点から学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.2分子状態の幾何学を読み、理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第3回 | 炭素原子が作るsp2混成軌道から形成されたπ結合を有するベンゼンの二重結合・π結合電子による導電性層状構無機化合物のグラファイト・超高移動度のグラフェンにおいて骨格を作るσ結合電子と電気伝導に関わるπ結合電子の働きについて学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.3炭素原子が作るsp2混成軌道を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第4回 | フラーレンは魔法数クラスターの安定性についての実験と理論の両面から研究され、サッカーボール構造のC60やC70、C76、C78、C84などのフラーレンべィビーが精製されている。カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube: CNT)は炭素原子のみでできた蜂の巣構造の炭素六角網面(Graphene)が円筒状に丸まったシームレスの管である。単層CNTや多層CNTが合成され、カイラルベクトルによって構造や電気的特性が異なる。電子構造や光学的性質及び成長モデルについて学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.4カーボンナノチューブを読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第5回 | ダイヤモンドはsp3混成軌道で正四面体の立体構造を作る共有結合結晶であり、最高の硬度・圧縮強度・引張強度を有している。Ⅳ族元素中で最も広いバンドギャップ(EG=5.6 eV)の透明な絶縁物であるが、不純物のドープによりpn接合発光ダイオードが作られている。ダイヤモンド状炭素はダイヤモンド構造のsp3クラスタとグラファイト構造のsp2クラスタが混在した非晶質な内部構造を有し、高熱伝導性・耐摩耗性・超潤滑性がある。構造と製造方法などについて学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.5ダイヤモンドのsp3混成軌道を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第6回 | 有機導体:導電性高分子の代表として主鎖が単結合と二重結合(σ結合+π結合)が交互に繰り返す共役構造のポリアセチレンについて述べる。また、局在化したπ電子を化学ドーピングによって引き抜くアクセプターや電子を供給するドナーの働きと、導電性に与える作用やソリトン・ポーラロンなどについて調査する。更にTetrathiofulvalene; TTF や、Tetracyano-p-quinodimethane; TCNQ などについても学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.6有機導体を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第7回 | 有機超伝導体:有機超伝導体の多くはドナーとアクセプターが規則正しく配列した分子性結晶であり、供給されたドナー電子をアクセプターが受け取る電荷移動がおこることによって、ドナー上に自由ホールが生成され、フェルミ面を持つ金属となる。それが臨界温度以下に冷やされると、クーパー対を作って超伝導になると考えられている。室温超伝導の可能性が述べられているLittleのモデルについても学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.7有機超伝導体を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第8回 | 有機半導体・トランジスタ:有機半導体分子は分子ごとに結合が切れているため、分子間にエネルギー障壁がある。価電子準位の波動関数は個々の分子中に局在している。HOMOとLUMOの差がバンドギャップに相当し、HOMOと真空準位のエネルギー差をイオン化ポテンシャル、LUMOと真空準位のエネルギー差を電子親和力と呼ぶ。また、p型は正孔を注入しやすい、n型は電子を注入しやすいという意味であり、電荷注入機構や電荷輸送機構などについて学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.8有機半導体・トランジスタを読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第9回 | 有機太陽電池:有機電子供与体(p型)と有機電子受容体(n型)を接合したヘテロ接合型太陽電池は軽量で屈曲が可能である。p層とn層の間に電子供与体と電子受容体を混合して製作した電荷分離層:i層を持つp-i-n型のバルクヘテロ接合により、変換効率の改善がなされた。分子の電子的特性や分子集合体形成能の最適化及び向上が特性向上に果たす役割について学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.9有機太陽電池を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第10回 | 有機電界発光(EL; Electro-Luminescence):発光層となる有機薄膜を陰極と陽極で挟んだサンドイッチ構造であり、片方の電極は透明なITO:Indium Tin Oxide 電極が用いられている。発光層は単層や多層のものがあり、有機分子にはキャリアがほとんど存在していないため、陽極から正孔と陰極から電子をバランスよく供給する必要がある。低分子型と高分子型におけるヘテロ構造と正孔・電子輸送機構及び量子効率などについて学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.10有機電界発光を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第11回 | 有機圧電・焦電材料:分子の持つ電気的な正負が同一方向に揃い分極する強誘電性の物質が存在する。有機物においては軽元素が多いため原子分極による誘電率は低い。有機酸(クロコン酸等)や有機塩基(アニリン・ピリジン系)を用いた有機物ではイオン分極による強誘電性が得られている。ハロゲンや酸素と炭素の結合による配向分極は大きな双極子モーメントを発生する。また、高分子は重合開始剤や促進剤・可塑剤などを添加するため空間電荷分極を起こしやすい。従って、可撓性に富む高分子は圧力による変形で分極を生じる圧電効果や、温度変化により分極が生じる焦電効果にフレキシブルに対応し易く、これらについて学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.11有機圧電・焦電材料を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第12回 | 有機磁性体:有機分子は低周期元素から構成されるため、内殻に電子の欠損を持つことができず、磁性を示すためには価電子のs軌道やp軌道に不対電子を担わせなければならない。分子上に分布した不対電子のスピン位相に注目し、π共役系のトポロジーを設計することで複数のスピンを整列させた高スピン物質について学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.12有機磁性体を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第13回 | コロイドやプラズモン・液晶・イオン液体: 液体中に別の物質を混ぜたときに、液体分子よりも大きな粒子となって均一に分散するものをコロイドと言い、分散媒が液体の場合はゾル:Sol 、固まった状態をゲル:Gelと呼ぶ。均一なナノ微粒子はプラズモン共鳴を生じ、光学的に特徴的な特性を示す。液晶は固体結晶と液体の中間的な状態で、棒状の結晶が融解すると分子の位置の規則性は無くなるが向きの規則性が残り、向きが揃った性質を残している。イオン液体はイオンだけから成る液体で、幅広い温度領域で液相を保ち、様々なイオン構造をデザインすることができる。これらの、工学において特徴的なソフトマターについて学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.13コロイドやプラズモン・液晶・イオン液体を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第14回 | 分子構造解析:分子の構造を解析する手法として代表的な a:光学分析法(紫外・可視・赤外・ラマンスペクトル)b:核磁気共鳴法・電子スピン共鳴法 c:質量分析法 d:X線結晶構造解析法 について学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.14分子構造解析を読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
第15回 | 分子シミュレーション:分子の計算機シミュレーションとして代表的な a:モンテカルロ法 b:分子動力学 c:分子力学法 などについて学修する。 | 【事前学修】「講義の資料」No.15分子シミュレーションを読み、輪講担当者は説明ができるように、聴取者は理解できない個所を質問できるようにまとめておく。【事後学修】講義において興味を持った事象や法則・応用を詳細に調査し、参考文献などを検索して理解する。 | 【事前学修】[2時間]【事後学修】[2時間] |
その他
教科書 |
ガイダンス時に講義資料を配布する。
http://www.ele.cst.nihon-u.ac.jp/DisLasLab/
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
Edited by, G. Hadziioannou and P. F. van Hutten 『Semiconducting Polymers: Chemistry, Physics and Engineering』Wiley-VCH 1 (2000)
吉野勝美/編著 『電子・光機能性高分子』 講談社サイエンティフィク 1991年 第4版
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成績評価の方法 及び基準 |
提出されたレポートの内容:50%と口頭試問:50% |
質問への対応 | 随時質問可能、講義の後は電子メール |
研究室又は 連絡先 |
駿河台校舎タワースコラ S1509室, Tel : 03-3259-0770, E-mail : suzuki.kaoru@nihon-u.ac.jp |
オフィスアワー |
火曜 駿河台 13:20 ~ 16:30
木曜 駿河台 15:00 ~ 16:30
金曜 駿河台 13:20 ~ 16:30
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学生への メッセージ |
輪講により自己啓発的な学習方法とプレゼンテーション能力及び文献調査能力を養って頂きたい。 |