2025年 理工学部 シラバス - 教養教育・外国語・保健体育・共通基礎
設置情報
科目名 |
科学技術と人間
「科学技術」と「人間」の関係を問い直すー人間はどこまで科学技術の主体でありうるのか?
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設置学科 | 一般教育 | 学年 | 1年 |
担当者 | 佐々木 慎吾 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 火曜3 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | P23H |
クラス | 1年生は情報・応化・物理・数学のみ。2年生以上は全学科 | ||
履修系統図 | 履修系統図の確認 |
概要
学修到達目標 | 「科学技術」は何のための営みなのか、その目的とは何か? と問われれば、多くの人が異口同音に、「人間の幸福のため」「人間がより良く生きられるようにするため」と答えるであろう。近代社会において当然視されているこうした理解は、「人間」を主体としてとらえ、科学技術は人間が何らかの目的(=善・幸福)のために用いる道具・手段であるという前提によって成立している。 ところで現実に目を向けると、こうした前提を揺るがすような、あるいは変更するような事例を観察することができる。「科学技術の産物が自律性を獲得し、産みの親である人間に反逆する」などという筋書きは、SFにおいてはすでに陳腐なものだとさえ言えるし、ある面で現実はそれを追い越しているとも言える。開発途上にあるとされ、国際的な規制が議論の的となっている「自律型致死性兵器システム(LAWS)」を例に考えてみよう。人間の決定を介することなく、AIの判断で敵を殺傷する兵器が戦場に投入されたならば(トランプ政権で大きな影響力を行使するイーロン・マスクがLAWS反対派だというのは意外な事実である)、そこでは人間はAIにとっての単なる「排除対象」であり、いかなる意味でももはや「主体」であるとは言えないだろう。そうした可能的未来をも射程に入れた議論が必要ではないだろうか。 こうした問題関心から、本講義では、現代における技術哲学や科学技術批判の諸論点に目配りしつつ、具体的な事例やそれらに関する最新の研究動向も紹介し、「科学技術と人間」の新たな展望を示したい。 |
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授業形態及び 授業方法 |
教室における通常の対面授業です。 適宜、画像資料を提示しながら講義を進めます。 |
履修条件 | 予備知識は特に必要ありません。意欲と知的好奇心のある学生を歓迎します。 なお、履修者は、下記の「成績評価基準」について了承したものとします。 環境ライフサブメジャー・コース設置科目 |
ディプロマ・ポリシー(DP)及びカリキュラム・ポリシー(CP)との関連 | 本授業科目はDP1・2・3及びCP1・2・3に該当しています。 |
授業計画
第1回 | イントロダクション 今あらためて「科学技術と人間」を論じることの意味を共有するとともに、社会システム理論の方法論について基本的な理解を与える。 ※受講上の注意、成績評価基準などについてもこの回に説明する。 | 事前学習(120分) シラバスを熟読し、上記「学修到達目標」冒頭に記した「問い」について、自分なりの答えを考えておく。 事後学習(120分) ノートをもとに、授業内容を定着させる。授業内で示した参考資料を調べ、自分の考えをまとめ、課題を実施する。 ※「事後学習」については、以下毎回同様とする。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
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第2回 | 道具的理性概念と「自然の支配」① 近代社会は、いかにして自然の軛から脱出したのか? ハーバー・ボッシュ法と「マルサスの罠」からの解放といった事例を検討する。 | 事前学習(120分) 前回の授業内の指示をもとに、参考文献にあたり、次回授業の前提となる知識や用語・人物について調べておく。 ※「事前学習」については、以下毎回同様とする。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第3回 | 道具的理性概念と「自然の支配」② 人間的自然としての「生老病死」の変容について、アンチエイジングや再生医療などの話題を取り上げる。 科学技術は死生観にどのような影響を与えるのか? | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第4回 | 哲学における科学技術批判の系譜 両次大戦期における軍事と科学技術、総力戦体制の関係を概説すると共に、フッサールやハイデガー、戦後のフランクフルト学派による近代合理性批判の潮流を追う。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第5回 | 三木清の「技術哲学」の現代性 日本における議論に目を転じ、明治時代以来、わが国において科学技術という営みがいかに位置づけられてきたのかを振り返る。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第6回 | 自律型致死性兵器(LAWS)の現状と課題 ① 人間の意思決定を介在させることなく作動し、かつ殺傷能力を有する兵器システムの国際的規制をめぐる議論、また倫理的観点からの論点を概説する。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第7回 | 自律型致死性兵器(LAWS)の現状と課題 ② 前回からの続き | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第8回 | 脳神経的介入と「インテグリティ」 精神的・身体的な統一性(インテグリティ)を具備した存在として「人間」を捉えるアプローチとその射程について論ずる。具体的事例として、他者の行動のコントロールを目的とした脳神経的介入を取り上げる。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第9回 | 優生学とその周辺 ① 人類の質的改良を目指すさまざまな試みを、歴史の中に振り返る。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第10回 | 優生学とその周辺 ② 生殖医療や出生前診断といった話題を通じて、ある種の科学技術が持つ倫理的側面について論ずる。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第11回 | エンハンスメントはどこまで許されるか? 医学的手段による人間の能力拡張(エンハンスメント)の現状とその倫理的課題について概説する。特に、兵士に対する薬理的エンハンスメントの問題を取り上げる。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第12回 | 科学技術とデュアルユース問題 現代の科学技術を論ずる上で避けられない、民生用技術と軍事技術の不可分な関係について議論する。 第4回以降のまとめも兼ねる。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第13回 | 「科学技術と人間」を振り返る 全体の議論を総括し、今後の展望を示す。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第14回 | (前半)第13回の続き (後半)理解度確認テストを授業内で実施する。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※毎回の課題実施を含む |
第15回 | 理解度確認テストの解説及び、全体の補足の議論を行う。 | 第1回・第2回の記載に準ずる。 | 事前・事後学修それぞれ2時間 ※最終課題の解き直しを含む |
その他
教科書 |
教科書は特に指定しません。
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参考書 |
参考書は、授業内で適宜紹介します。
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成績評価の方法 及び基準 |
①授業内容についての課題を提出して下さい。全12回分の課題を評価対象とします。期限までに提出されたものには1回につき2点を与え、内容に応じて最大で2点を加点します。(満点で4×12=48点) ②第14回において、最終課題をテスト形式で実施します。(ノート参照可・満点で52点) ①②を合わせて100点満点。 ③提出物において他者の文章の無断引用・盗用を行った者は、いかなる理由であろうとも不合格とします。この規定は厳しく運用いたします。 ④授業中の私語など、他のの学生の妨げとなる行為についても、成績評価の対象とします。 |
定期試験等に ついて |
理解度確認期間(14週目又は15週目)に平常試験を実施予定 |
質問への対応 | 担当者に直接、あるいはメールで質問して下さい。課題提出の際、併記してもかまいません。内容に応じて、個別回答または次回授業内にて回答します。 提出物の解答・解説は、原則として次回授業内に実施します。 ※履修条件についての問い合わせなど、重要事項については、必ずメールの件名欄に「至急」「重要」などと明記して下さい。優先対応します。記載無き場合、対応が遅れる可能性があります。 |
研究室又は 連絡先 |
sasaki.shingo20@nihon-u.ac.jp ※必ず大学から割り当てられたメールアドレス(nihon-u.ac.jp)を使用してください。 それ以外のアドレスから送信されたメールは受理しない場合があります。 |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
私のような人文・社会系の研究者が、具体的な「科学技術」について語ることに違和感を覚える学生もいるかと思います。むしろそのような学生は大歓迎です。文系理系の垣根を越えた知的好奇心や学習意欲のある参加者をお待ちしています。 |