2025年 理工学部 シラバス - 学芸員課程
設置情報
科目名 | 学)博物館資料保存論 | ||
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設置学科 | 一般教育 | 学年 | 2年 |
担当者 | 江水 是仁 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 木曜5 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | Y62C |
クラス | |||
その他 | 実務経験のある教員による授業科目 |
概要
学修到達目標 | ・博物館における資料保存の意義を理解し、説明することができる ・資料を保存するための環境や技術などを理解し、説明することができる ・博物館資料としての地域資源を保存し、活用する知識と能力を身につけることができる |
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授業形態及び 授業方法 |
長谷川町子美術館や日本科学未来館で勤務経験を有することから、実際の博物館の現場での経験を通してこれからの博物館に求められる役割や知識などを、研究成果と絡めて授業を行う。また、国際博物館会議(ICOM)での学会発表や国際人材育成委員会の理事を経験したことから、世界的な博物館の動向も授業で取り上げ、広い視野で博物館に関する知見を深める授業を行う。 なお、すべての回「対面授業」で行う。 |
履修条件 | 「博物館概論」の単位をすでに取得していることが望ましい。 将来、理工系の博物館や自然史系の博物館等、学芸員として博物館で勤務したい学生に履修してもらいたい。 |
ディプロマ・ポリシー(DP)及びカリキュラム・ポリシー(CP)との関連 | . |
授業計画
第1回 | ガイダンス・振り返り-博物館資料保存論を履修するにあたっての心構え、注意事項を確認する。 | 事前学修:今まで学修した学芸員養成課程の科目を振り返り、博物館資料を保存する必要性について確認すること 事後学修:博物館資料保存論を学ぶ意義、学芸員として資料保存のために必要な能力や技術について確認すること(100分) | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
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第2回 | 博物館資料保存の意義 なぜ博物館資料は保存されなければならないのか、文化財保護法や博物館法など、関連法規をもとに理解を深める | 事前学修:博物館の四大活動のなかで、博物館資料保存活動が他の博物館の活動とどのような繋がりがあるのかを説明できるようにしておくこと 事後学修:博物館で資料を保存する意義について確認すること | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第3回 | 博物館資料の状況調査と実態把握 博物館資料の状況と実態を把握することは、今後の資料保存の指針につながる。具体的な調査方法、実態把握の方法についての理解を深める | 事前学修:学芸員が資料を保存するにあたり、必要になる業務にはどのようなものがあるのか、説明できるようにしておくこと 事後学修:博物館資料保存のために、実際の博物館業務ではどのようなことが行われているのかを確認すること | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第4回 | 博物館資料保存の諸条件とその影響1:博物館資料劣化・破損要因 どのようにして資料は劣化・破損するのか、科学的にその要因を理解する | 事前学修:受講者自身の個人的な経験をもとに、物が劣化する要因にはどのようなものがあるのか、説明できるようにしておくこと 事後学修:物の劣化を防ぐためにどのようなことができるのか、確認すること | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第5回 | 博物館資料保存の諸条件とその影響2:生物被害とIPM 資料を食害する生物の特徴と、食害を防ぐための方法についての理解を深める | 事前学修:受講者の身近な環境にある物を例にして、生物による資料の劣化にはどのようなものがあるのかを把握しておくこと 事後学修:生物による劣化を防ぐためにどのようなことができるのか、確認すること | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第6回 | 博物館資料保存の諸条件とその影響3:博物館資料劣化・破損防止対策 資料の劣化・破損要因を理解したことで、それらの要因を遠ざけ、資料を良好な状態で保存するための知識や技術の理解を深める | 事前学修:第4回、第5回で復習したことをもとに、博物館で資料の劣化を防ぐためにはどのようなことができるのか、自分の言葉で説明できるようにしておくこと 事後学修:博物館の現場で資料の劣化・破損防止のために、具体的にどのような活動が行われているのかを把握するため、博物館を見学してその理解を深めること | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第7回 | 収蔵庫・展示室などの保存環境 資料の劣化・破損、食害を防ぐための収蔵庫や展示室の在り方についての知見を深める | 事前指導:素資料から原資料の過程を経て博物館資料となって博物館の収蔵庫に資料は納められるが、その際、どのようなリスクがあるか、また展示することによるリスクは何か、自分の言葉で説明できるようにしておくこと 事後学修:博物館資料を収蔵庫に納める際に求められる技術はどのようなものがあったかを明確にしておくこと | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第8回 | 博物館資料の修復・修理 劣化・破損、食害による被害を受けた資料を修復・修理するに当たっての基本的な考え方についての理解を深める | 事前学修:博物館資料を修復・修理するということはどのようなリスクがあるのか、そのリスクを負ってでも修復・修理する意義とはなにか、自分の言葉で説明できるようにしておくこと 事後学修:博物館資料を修復・修理するにあたり、学芸員としてどのような行動をしたらいいか、明確にしておくこと | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第9回 | 博物館資料の梱包と輸送 劣化・破損させることなく資料を輸送するための基本的な考え方や技術に関する理解を深める | 事前学修:博物館資料を運ぶ際、どのようなリスクがあるのか、そのリスクを避けるためにはどうしたらいいか、自分の言葉で説明できるようにしておくこと 事後学修:博物館資料を輸送するにあたり、資料の梱包方法や輸送において気をつけることを明確にしておくこと | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第10回 | 自然災害から博物館資料を守るための対策 地震の揺れ、津波、洪水などにより博物館と博物館資料はどのような被害を受けるのかを把握し、それらを避けるための対策の理解を深める | 事前学修:自然災害により、博物館資料にはどのような脅威があるのかを自分の言葉で説明できるようにしておくこと 事後学修:自然災害から博物館資料を守るために、博物館や学芸員にはどのような知識や技術が必要か、明確にしておくこと | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第11回 | 地域資源の保存と活用1:エコミュージアムの事例 地域住民の手により資料の価値を見出し、保全し、利活用する、新しい博物館活動の実態を把握する | 事前学修:博物館資料を物理的な博物館という空間で収蔵し、活用する場合と、博物館資料が誕生した空間で劣化を防ぎながら活用する場合がある。それぞれのメリット、デメリットを自分の言葉で説明できるようにしておくこと 事後学修:受講生が就職を希望する博物館において、現地で資料を保存し、活用する活動を行う際、どのような活動ができるのかを明確にしておくこと | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第12回 | 地域資源の保存と活用2:ジオパークの事例 地球活動が起こった現場を丸ごと保存し、利活用する、新しい博物館活動の実態を把握する | 事前学修:地域の地質現象の特徴などを活かし、地域を知る面白さを紹介する「ブラタモリ」といった番組を視聴し、そこに登場する学芸員などの活動に注目すること 事後学修:物理的に博物館という空間に納まりきれない資料を保存、活用するにあたり、どのような活動ができるのかを明確にしておくこと | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第13回 | 自然環境の保護:水族館・動物園における種の保存、生物多様性 生物を扱う博物館における資料(生物)保存とその使命についての理解を深める | 事前学修:自然環境の悪化により、種の保存や生物多様性が危機に瀕している。そのような状況の中で、生物を扱う博物館にはどのような活動が期待されているのか、自分の言葉で説明できるようにしておくこと 事後学修:生物を扱う博物館を見学し、種の保存、生物多様性のためにどのような活動をしているのかを確認すること | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第14回 | 人文系資料の取扱いに関する映像を視聴し、理工系・自然史系以外の博物館で扱う資料保存の実態を理解する | 事前学修:これまでの授業を振り返り、どのようなことを学んできたのかを振り返ること 事後学修:映像を視聴したことにより、人文系の資料の取扱いについて振り返ること | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
第15回 | 平常試験及びその解説 授業で得られた知見の理解度を測る試験を行うとともに、授業の振り返りを行う | 事前学修:平常試験の内容と対策を事前に伝えるので、その内容について、受講者自身の考えをまとめておくこと 事後学修:平常試験終了後、採点のポイントについて解説をする。自身の回答を振り返り、博物館資料保存論として学んだことを内省すること | 事前学修:2時間 事後学修:2時間 |
その他
教科書 |
この授業では教科書を指定せず、授業ごとにレジュメを配布する。
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参考書 |
大原一興 『エコミュージアムへの旅』 鹿島出版会 1999年
神庭信幸 『博物館資料の臨床保存学』 武蔵野美術大学出版局 2014年
日本博物館協会 『博物館資料取扱いガイドブック―文化財、美術品等梱包・輸送の手引き― 』 ぎょうせい 2023年
石崎武志 『博物館資料保存論』 講談社 2024年
1冊を選ぶのであれば、石崎武志著『博物館資料保存論』を勧める。
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成績評価の方法 及び基準 |
学修成果目標に関して、15回目の講義では授業内試験を実施(60分)、そののち採点のポイントと博物館資料保存論の振り返りを行う。 授業終了後、毎回コメントシートの提出を課す。提出が講義の出席回数の1/3を下回ったものは、試験の成績がどれほどに良くても単位の取得を認めない。コメントシートの記載内容も評価の対象とする。 評価の割合 毎回のコメントシート(13回)30% + 試験 70% 評価基準 S)授業内試験および小レポートにおいて、学芸員資格に求めらる知見が高度に身についていると判断できる点数を取得し、かつ博物館資料保存に対する課題などに関し、自分なりの考えがまとめられていると認められる A) Sに次ぐ。 B)授業内試験および小レポートにおいて、学芸員資格に求めらる知見が高度に身についていると判断できる点数を取得しているものの、博物館資料保存に対する課題などに関し、自分なりの考えが認められない C)授業内試験および小レポートにおいて、学芸員資格に求められる知見が最低限度でとどまっており、博物館資料保存に対する課題などに関し、自分なりの考えが認められない E)授業内試験および小レポートにおいて、学芸員資格に求められる知見が身についておらず、博物館資料保存に対する課題などに関し、自分なりの考えが認められない。さらに授業への取り組みが消極的である |
定期試験等に ついて |
理解度確認期間(14週目又は15週目)に平常試験を実施予定 |
質問への対応 | 基本メールで対応する。また授業開始前、終了後の時間にも対応する。 |
研究室又は 連絡先 |
emizu.museology@outlook.jp(メールアドレス) 0463-63-4579(IP電話直通) |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
博物館学芸員の求人は大変少なく、狭き門となっています。とはいえ、資格を取得しない限り前には進めません。受講者には、資格を取得して博物館に勤めたい、という強い思いをもって授業に臨んでください。 |