2025年 大学院理工学研究科 シラバス - 建築学専攻
設置情報
科目名 |
建築設計特論Ⅲ
建築設計における社会性と公共性
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設置学科 | 建築学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 今村 雅樹 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 木曜6 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | C46A |
クラス | 建築学専攻 | ||
その他 | 実務経験のある教員による授業科目 |
概要
学修到達目標 | 建築設計業務の基礎を知ることができる。その広がりを具体的に理解し、建築計画・建築設計に役立てることができる。<授業のねらい>建築設計活動は、有資格者による専門的業務であると同時に、高度な社会的責任を有するものである。多様化・複雑化・高度化する社会環境に伴って、建築設計・管理業務も同様の傾向に進んでいる。その職能が置かれている現状を理解し、業務の広がりと責任、計画性と経営性を同時に実現することについて学ぶ。そうした認識のもとに、職能と倫理、権利と責任、資格と業務範囲等を正しく理解する。 |
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授業形態及び 授業方法 |
授業は初回から「対面授業」を主とする。パワーポイントなどと板書を併用した講義と自分たちが調べたこと・学習したことを発表する授業を織り交ぜて行う。公共建築の設計を実務としておこなっている建築家の今村雅樹が主題を解説し、そこから受講生の意見を求める対話的な授業形式で受講生の参加を促す。実際の建築設計事例などを通して、設計者に求められている社会的役割等について解説したり、受講生同士でディスカッションを行う。授業計画に書かれている各回のキーワードは、その回のみに完結してなく、それぞれの回の授業内容中に散りばめられているので、各自の学習によって体系を掴んで理解していくこと。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
普段から社会に対する問題意識を持ち、課題について考えること。職能に関する倫理観、権利と責任について、単に座学として学習するのでなく、それを日常の建築設計や計画の中で実践していく必要がある。そのため、普段から社会的な出来事に関心を持ち、社会状況や要請について考え、問題意識を持つことが望まれる。 |
授業計画
第1回 | 授業の主旨とその意義 授業の進め方と評価について | 【事後学習】建築の社会性について、各自の意見を持っておくこと | 2時間 |
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第2回 | 建築と社会 建築の社会的、文化的意義について・・・社会文化資産としての建築・都市 現代社会をどう読むか、そして建築に何が可能か? | 【事前学習】建築の社会性について、各自の意見を持つておくこと 【事後学習】建築の設計行為について、各自の意見をまとめておくこと | 各2時間 |
第3回 | 公共建築マネジメント 建築の設計行為 建築設計の概要=建築企画から維持・修繕・改修まで 多様化する現代社会と多様化する建築設計業務の行方 | 【事前学習】建築の設計行為について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】設計者の社会性について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第4回 | 設計者の権利と責任 建築士法の業務独占の権利、著作権法に規定されている設計者の権利 業務委託の信任に伴う責任、設計者の方的・社会的・倫理的責任 近現代社会における建築家 | 【事前学習】建築の設計行為について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】レポート課題について、各自の意見をまとめること | 各2時間 |
第5回 | 建築家の資格と建築家教育・国際化 建築家の国内資格と国際資格、またその基盤となる教育に関わるUNESCO/UIAやJABEE教育プログラム認定制度 <レポート提出1> | 【事前学習】世界の建築設計行為について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】建築家教育の必要性について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第6回 | 建築家の職能 建築・建築家という概念の誕生の歴史・・・現代社会におけるその存在意 義歴史的な建築像と現代における建築家の職能 アトリエ建築家・組織設計事務所建築家・ゼネコン建築家の役割 | 【事前学習】建築設計と建築家の役割について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】各自の建築家像について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第7回 | 建築関連分野の職能 企画・ファイナンス・開発・商品化・流通等建築関連分野における職能と広がり ネット社会における建築企画プロデュースと建築家の役割 | 【事前学習】建築家の職能について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】設計という仕事について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第8回 | 建築家の仕事の広がりと狭まり | 【事前学習】建築設計の具体的な内容について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】設計行為の社会性について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第9回 | 発注者・ユーザー・設計者・施工者・管理運営者 複雑化・多様化するそれぞれの組織と設計主体のあり方 建築業界の様々な立場の人たちの役割とその協働関係 「リノベーション+シェアハウジング」を事例に、これからの建築の行方 | 【事前学習】建築設計行為の組織化について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】レポート課題について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第10回 | 設計者の選定 コンペティション、プロポーザル、QBS、匿名や入札など設計者選定方法の功罪 設計者を選定する根拠、建築設計の優劣の判断基準 <レポート提出2> | 【事前学習】建築設計行為の組織化について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】設計行為の現代性と未来性について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第11回 | 設計の業務 都市デザインから家具デザインまで、企画段階から完成後のフォローアップ業務まで各分野、各フェーズにおける設計の実務多様化する現代社会における設計業務の種類とプロセス | 【事前学習】複雑化する建築設計行為について、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】設計行為の多様性について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第12回 | 設計図書、仕様書の役割 建物を施工するための実施設計図書や仕様書の役割 設計図書の成り立ち、請負契約図書の構成、建築イメージ表現手段の多様化 何のためにどのような図面を誰が描くのか? | 【事前学習】建築設計行為のリアリティについて、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】設計行為の流れやフェイズについて、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第13回 | コスト・プランニングとコスト・コントロール プロジェクト・ファイナンシングから建設費の立案 積算、ヴァリュー・エンジニアリング(VE) 建築費を誰がどのようにして決めるか、建築デザインと建築費の関係 | 【事前学習】建築設計の企画から監理までについて、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】建設の経済性について、各自の意見を考えておくこと | 各2時間 |
第14回 | 建築設計事務所の経営 法人・個人・プロフェッショナル・コーポレーション(PC)、専業・兼業等の設計事務所形態 業務報酬、設計・監理委託契約、事務所の経営とその財務 | 【事前学習】建築設計の事業を行うためにはどのようなことが必要かついて、各自の意見をまとめておくこと 【事後学習】設計行為・監理・メンテナンスについて、各自の意見をまとめて、レポート課題に取り組むこと | 各2時間 |
第15回 | 設計事務所の形態とその運営、設計料の根拠 地方建築家の役割 <レポート提出3> | 【事後学習】設計行為について、まとめの意見を考えること | 2時間 |
その他
教科書 |
本授業では教科書は指定しないが、各授業の事前に今村からテキストが受講生に配布される。
そのテキストをもとに授業は進められ、受講生とのインタラクティブな意見交換が行われる。
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
今村雅樹・小泉雅生・高橋晶子 『『パブリック空間の本』』 パブリック空間の本ー公共性をもった空間の今までとこれから 彰国社 2013年年 第第2版版
「公共性を持った空間」について、歴史(古代から現代まで)的・世界(西洋・東洋)的な都市や建築の捉え方、作られ方、これからのあり方・・を考察する教科書的な本である。
設計の手法からノーテーションのあり方など、設計方法を構築するのに参考となる。
その他の参考資料は授業内にて提示する。
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成績評価の方法 及び基準 |
2〜3回のレポートや授業内での発言を元に評価 |
質問への対応 | 授業中及び電子メールなどで受け付ける |
研究室又は 連絡先 |
今村雅樹 imamura.masaki@nihon-u.ac.jp もしくは imaarch@masakiimamura.com |
オフィスアワー |
木曜 駿河台 16:00 ~ 17:00 タワースコラ2階「講師室」
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学生への メッセージ |
建築は、人々の安全と安心の拠り所を作る仕事である。日々の暮らしに欠かせない重要な社会的存在であり、文化的価値を有するものでもある。建築が社会的、文化的に負っている責任の重みを理解し、正しい倫理観を持って建築設計業務が行わなければならない。その依って立つ法的根拠、資格、国際的な認識等について体系的な授業を行う。また、企画から維持管理に至る業務全般、多様化する発注者やユーザー、設計者選定、コスト・コントロール、業務報酬、事務所経営などについても幅広く学ぶ。授業のテーマとトピックスは教員側から提供するが、それを材料として授業をつくりだすのは院生みんなである。知識を元に、考え、発表、議論することで地検が生まれていくので、ディスカッションに積極的に参加・発言を期待する。 |