2025年 大学院理工学研究科 シラバス - 物理学専攻
設置情報
科目名 | プラズマ物理学特論Ⅰ | ||
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設置学科 | 物理学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 浅井 朋彦 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 水曜6 金曜2 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | M36A M52A |
クラス |
概要
学修到達目標 | プラズマは、それ自身が作り出す電磁場と相互作用する荷電粒子の集合であり、状況に応じて多様な特徴的様相(集団的な振る舞い)を示す。そのため、プラズマを理解し、研究するためには、適切な特徴を抽出し、それに基づいたモデルを構築することが不可欠である。 本講義では、単一粒子モデル、運動論的モデル、流体モデル など、さまざまなプラズマ記述法を体系的に学び、それぞれの適用範囲と限界を理解する。また、開放端系プラズマや超高ベータプラズマなどの特異なプラズマ現象についても取り上げ、最新の研究動向に触れる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
授業方法:各回の講義では、プラズマ物理学の基礎から応用に至るまでの理論的枠組みを体系的に説明し、具体的なプラズマ現象について解説する。また、各プラズマモデルの適用範囲や限界を理解するため、理論的な議論に加え、必要に応じて演習問題を通じた復習を行い、理解を深める。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
【受講のための予備知識】 本講義を理解するためには、学部レベルの力学、電磁気学、統計物理学の基礎 を十分に修得していることが望ましい。特に、荷電粒子の運動、マクスウェル方程式、熱力学的分布関数 などの概念を理解していることが必要である。 また、プラズマ物理学および核融合科学を履修(または聴講)していることが望ましい。大学院進学予定者が科目等履修生として受講する場合は、プラズマ物理学または核融合科学を履修済みであることが推奨される。 予習:各回の講義内容に関連する基礎的な数式や概念(例:プラズマの運動方程式、MHD方程式、分布関数など)を事前に確認し、講義の理解を深める。 復習:講義内容を整理し、数式の導出を確認する。特に、各プラズマモデルの適用範囲を比較し、異なる記述法の違いを理解することが重要である。 |
授業計画
第1回 | プラズマとその多面性・階層性 ・ プラズマの定義とその特徴(電気的準中性、デバイ遮蔽、プラズマ振動) ・ プラズマの多面性(宇宙・天体プラズマ、産業応用、核融合プラズマ) ・ プラズマの階層性(単一粒子運動、運動論的記述、流体記述) | 【事前学修】 ・ 電磁気学、統計力学の基礎を復習し、プラズマの定義や特徴を整理する(2時間) 【事後学修】 ・ 授業で学んだプラズマの分類(宇宙、核融合、産業応用)をまとめ、代表的な例を調査する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
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第2回 | 単一粒子の運動/ドリフト運動 ・ 磁場中の荷電粒子の運動(サイクロトロン運動、ラーマー半径) ・ 一様磁場中のドリフト(E×Bドリフト、外力ドリフト) ・ 非一様磁場中のドリフト(磁場勾配ドリフト、曲率ドリフト) | 【事前学修】 ・ 電磁気学におけるローレンツ力の概念と円運動の式を復習する(2時間) 【事後学修】 ・ サイクロトロン運動やドリフト運動の導出を整理し、例題を解く(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第3回 | 断熱不変量と磁気ミラー ・ 断熱不変量の導出とその物理的意味 ・ 時間変動する電磁場中の荷電粒子運動 ・ 磁気ミラー装置と粒子閉じ込め(トカマクのバナナ軌道) | 【事前学修】 ・ 断熱不変量の基本概念とその適用範囲を調べる(2時間) 【事後学修】 ・ 磁気ミラー装置における粒子軌道を計算し、バナナ軌道の特徴を整理する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第4回 | プラズマの集団的性質(デバイ遮蔽、プラズマ振動、分子運動論的記述) ・ プラズマの電気的準中性とデバイ遮蔽長 ・ プラズマ振動とその分散関係 ・ ボルツマン方程式とマックスウェル・ボルツマン分布 | 【事前学修】 ・ ボルツマン方程式とマクスウェル分布を復習し、気体とプラズマの違いを確認する(2時間) 【事後学修】 ・ デバイ遮蔽とプラズマ振動の理論的導出を整理し、計算例を確認する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第5回 | クーロン散乱と制動放射/プラズマの抵抗と拡散定数 ・ クーロン散乱の断面積と衝突頻度 ・ 制動放射とシンクロトロン放射 ・ プラズマの電気抵抗と拡散(古典拡散、ボーム拡散、新古典拡散) | 【事前学修】 ・ クーロン相互作用の基礎と、制動放射の発生機構を調べる(2時間) 【事後学修】 ・ プラズマの電気抵抗や拡散の理論モデルを整理し、輸送現象との関連を考察する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第6回 | 磁気流体としてのプラズマ(MHD近似・MHD方程式) ・ 磁気流体力学(MHD)の基本概念 ・ MHD方程式の導出(連続の式、運動方程式、誘導方程式) ・ アルフベン波とMHDの適用例 | 【事前学修】 ・ 磁気流体力学(MHD)の基礎方程式と適用条件を学ぶ(2時間) 【事後学修】 ・ アルフベン波の性質をまとめ、MHDの適用範囲を整理する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第7回 | MHD平衡と磁場閉じ込め ・ MHD平衡の基本条件(グラッド・シャフラノフ方程式) ・ トカマク・ヘリカル装置の平衡構造 ・ プラズマベータと閉じ込め性能 | 【事前学修】 ・ トカマク・ヘリカル装置の平衡条件を調査し、プラズマ閉じ込めの基本概念を学ぶ(2時間) 【事後学修】 ・ MHD平衡の数学的導出を確認し、閉じ込め性能の計算例を考察する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第8回 | 開放端系のプラズマ物理学 ・ ミラー装置・直線型装置の特徴 ・ 磁気ミラー閉じ込めと損失機構 ・ 開放端系のプラズマの応用 | 【事前学修】 ・ ミラー装置や直線型装置の特徴を調べ、閉じ込め方式の違いを理解する(2時間) 【事後学修】 ・ 宇宙プラズマと開放端系プラズマの類似性をまとめる(2時間) | 【事前学修】3時間 【事後学修】1時間 |
第9回 | 磁気リコネクション・MHDダイナモ現象(流れによる磁場の自発的形成) ・ 磁気リコネクションの基礎(磁場のつなぎ替え) ・ 宇宙プラズマと核融合プラズマへの応用 ・ MHDダイナモと地球磁場の起源 | 【事前学修】 ・ 磁気リコネクションの基本概念と、エネルギー解放メカニズムを学ぶ(2時間) 【事後学修】 ・ ダイナモ理論の適用事例を調査し、磁場の自己生成メカニズムを整理する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第10回 | プラズマの不安定性とその制御 ・ MHD不安定性(キンク不安定性、バルーニング不安定性) ・ 異常輸送とプラズマ揺動 ・ 安定化技術(シア流、外部磁場制御) | 【事前学修】 ・ 高ベータプラズマの安定性条件と乱流輸送の理論を学ぶ(2時間) 【事後学修】 ・ FRCの理論と実験結果を調査し、核融合応用への可能性を考察する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第11回 | 超高ベータプラズマの物理学 ・ 高ベータプラズマの特徴と物理的制約 ・ 高ベータプラズマの安定性と輸送 ・ FRC(Field-Reversed Configuration)の理論と実験 | 【事前学修】 ・ 主要なMHD不安定性の種類と発生条件を調べる(2時間) 【事後学修】 ・ 安定化技術の理論モデルを整理し、実際の装置での適用事例を確認する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第12回 | プラズマの計測(基礎編) ・ 代表的なプラズマ計測技術(ラングミュアプローブ、トムソン散乱法) ・ プラズマ密度・温度・電場の測定 ・ 計測システムの設計と誤差解析 | 【事前学修】 ・ 代表的なプラズマ計測手法(ラングミュアプローブ、分光法)を学ぶ(2時間) 【事後学修】 ・ 各計測手法の精度や適用範囲を整理し、誤差要因を考察する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第13回 | プラズマの計測(温度・熱計測とモデルとの関係) ・ プラズマ温度の測定手法(分光法、ボルツマン分布、X線診断) ・ 温度分布とプラズマモデル(熱平衡、非熱平衡) ・ さまざまなプラズマ環境での熱計測の課題 | 【事前学修】 ・ プラズマ温度計測の手法(X線診断、ボルツマン分布)を学ぶ(2時間) 【事後学修】 ・ 温度分布と熱平衡・非平衡モデルの関連を整理する(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第14回 | ラズマ中の衝撃波/相対論的プラズマ/完全反磁性プラズマ ・ 衝撃波の基本概念とその伝搬特性 ・ 相対論的プラズマの特徴と高エネルギー現象 ・ 完全反磁性プラズマ(FRCなど)の特性と閉じ込め機構 | 【事前学修】 ・ 衝撃波の基本概念とその伝搬特性を調べる(2時間) 【事後学修】 ・ 相対論的プラズマの特徴と実験・観測例をまとめる(2時間) | 【事前学修】2時間 【事後学修】2時間 |
第15回 | 授業内試験とその解説 ・ これまでの講義内容の総復習 ・ 試験とその解説 | 【事前学修】 ・ 第1~14回の内容を復習し、主要な理論と計算を確認する(2時間) 【事後学修】 ・ 試験の解説を参考に、不足していた知識を補強する(2時間) | 【事前学修】3時間 【事後学修】1時間 |
その他
教科書 |
Umran Inan & Marek Golkowski, Principales of Plasma Physics for Engineers and Scientists, CAMBRIDGE UNIVERSITY PRESS, 2011, 1st edition
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
Francis F. Chen 『Introduction to Plasma Physics and Controlled Fusion』 Springer 2016年 第3rd版
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成績評価の方法 及び基準 |
授業内で課するレポート(50%)および授業内試験(50%)の結果で評価する。 |
質問への対応 | 授業中随時受け付ける。 |
研究室又は 連絡先 |
駿河台校舎 7号館721C室 asai.tomohiko@nihon-u.ac.jp |
オフィスアワー |
水曜 駿河台 12:30 ~ 13:10
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学生への メッセージ |
授業中に配布する演習問題を解くことによってプラズマの物理の考え方を学びましょう。 |