2021年 理工学部 シラバス - 教養教育・外国語・保健体育・共通基礎
設置情報
科目名 | 心理学 | ||
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設置学科 | 一般教育 | 学年 | 1年 |
担当者 | 伊藤 令枝 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 土曜5 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | P65R |
クラス | 1年生は電気工学科・応用情報工学科・数学科のみ。2年生以上は学科による履修制限なし。 |
概要
学修到達目標 | 心理学は、人の心を読むテクニックやマインド・コントロールなどではなく、人間の「こころ」を客観的に把握しようとする科学である。 そこで本講義では、人間が周囲の環境情報を受容、認識する仕組みやその基礎的な理論を学習し、人間の知覚・認知システムの特徴や複雑性を科学的に理解することを目指す。 さらに、こころにまつわる俗説を批判的に思考する視点を養う。 |
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授業形態及び 授業方法 |
オンデマンド型授業 CSTポータルIIと動画保存用サーバを併用して、授業資料と講義動画、課題等を配信するので、各自の都合に合わせて学習を進めていくものとする。 各資料の配信スケジュールは第1回授業で連絡する。 なお、授業配信プラットフォームは変更される場合がある。 |
履修条件 | 履修を希望する学生は、予めシラバスを熟読し、履修登録に関するお知らせ等を参照しながら履修手続きを行うこと(本科目は、履修者数によって履修を制限しなければならない場合がある)。 理工学部では心理学科目として「心理学」「応用心理学」の2科目が設置されているが、それぞれ独立した科目であり、習得する理論や現象、そしてそのためのアプローチ方法は完全に異なる。そのため、3年生以上は、両科目を履修して、心理学を多様な側面から学習することが望ましい。一方で1~2年生は「心理学」しか履修できないので、「応用心理学」の分野を自分自身で学習することが求められる(学習のヒントは第1回授業で連絡する)。 サブメジャー・コースについては、履修要覧等を参照のこと。 |
授業計画
第1回 | 心理学へのアプローチ -科学としての心理学、心理学による日常生活の理解と応用可能性、学習の進め方、履修上の注意点 【事前学習】履修要覧や一般教育科目の手引き、「心理学」「応用心理学」両科目のシラバスを熟読する。(2時間) 【事後学習】教養教育科目としての心理学の学習の意義を考え、心理学の学習に対する心構えを整える。(2時間) |
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第2回 | 欲求と行動(1) -神経系の構造、ニューロンによる情報伝達メカニズム、中枢系における精神機能の局在性 【事前学習】「こころ」とは何か、どこに存在するのか思考する。(2時間) 【事後学習】「脳科学」的俗説が客観的事実とどのように異なるのか調べる。(2時間) |
第3回 | 欲求と行動(2) -精神分析と行動主義、動機づけのメカニズム、欲求と欲求不満、適応機制、薬物依存 【事前学習】こころの状態と行動との関係性、ストレス解消行動について具体的に考える。(2時間) 【事後学習】行動の背景にある「こころ」を測定する方法について考察する。(2時間) |
第4回 | 欲求と行動(3) -生得的に備わる行動メカニズム、後天的な学習による行動の変容、オペラント条件づけ、観察学習 【事前学習】課題に対する反応時間を計測して学習過程を実証し、学習が容易に成立することを発見する。(3時間) 【事後学習】人工知能におけるディープ・ラーニングについて調べる。(1時間) |
第5回 | 記憶(1) -認知心理学の考え方、記憶の保持と忘却のメカニズム、記憶障害の症例と記憶の複雑性 【事前学習】コンピュータと人間の記憶システムの違いを考える。(2時間) 【事後学習】忘却の減衰説と干渉説のそれぞれの考え方を整理し、記憶のダイナミクスを理解する。(2時間) |
第6回 | 記憶(2) -感覚記憶と短期記憶、保持できる情報量の限界、ワーキング・メモリの機能、心的イメージの利用とその実証 【事前学習】「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の違いとそれぞれの特徴について調べる。(1時間) 【事後学習】短期記憶実験を行い、リハーサルや語呂合わせが記憶に果たす役割を検討する。(3時間) |
第7回 | 記憶(3) -単語の記憶と系列位置、長期記憶の利用と知識、意味ネットワークモデル 【事前学習】専門的能力は記憶力の高さに依存するのかどうか考える。(2時間) 【事後学習】脳内に蓄積されている知識を可視化する。(2時間) |
第8回 | 記憶(4) -長期記憶の定着と体制化、外的情報による記憶の変容や「汚染」、フォルス・メモリ 【事前学習】自分で思い出せる出来事は、確実に自分が経験したことであると言えるかどうか考察する。(1時間) 【事後学習】処理水準説や自己照合効果、フォルス・メモリについて実験的に検討する。(3時間) |
第9回 | 感覚・知覚(1) -感覚器官の構造と中枢系への情報伝達システム、特殊神経エネルギー説、共感覚、順応、対比と同化 【事前学習】外的刺激をなるべく受容しない環境に身を置き、その時の感覚的変化を記録する。(1時間) 【事後学習】順応、対比、残像の各実験を行い、物理量と心理量(感覚量)との関係性について考察する。(3時間) |
第10回 | 感覚・知覚(2) -色覚のしくみ、混色実験、三色説と反対色説、主観色 【事前学習】色覚のメカニズムを特殊神経エネルギー説から考察する。(2時間) 【事後学習】眼球の構造的な盲点を探り、神経系の情報伝達メカニズムを理解する。(2時間) |
第11回 | 感覚・知覚(3) -ゲシュタルト心理学の考え方、幾何学的錯視、奥行き知覚、運動知覚と錯視 【事前学習】奥行きを知覚するための眼球運動的手がかりと絵画的手がかりについて調べる。(1時間) 【事後学習】ミューラー・リヤー錯視について精神物理学的測定法を用いて実証する。(3時間) |
第12回 | 感覚・知覚(4) -パタン認識、知覚の恒常性、プレグナンツの原理、主観的輪郭、全体処理と部分処理 【事前学習】エッシャーとダリの作品群を鑑賞し、知覚の原理を理解する。(2時間) 【事後学習】視覚的探索課題を行い、脳内の情報処理過程について考察する。(2時間) |
第13回 | 認知と思考(1) -選択的注意、携帯端末使用を伴う「ながら行動」の危険性、選択的注意と交通事故 【事前学習】多重課題を用いた実験を行い、注意力の分散と限界について検討する。(2時間) 【事後学習】交通場面におけるさまざまな不安全行動を減らす方策について考察する。(2時間) |
第14回 | 認知と思考(2) -ボトムアップ処理とトップダウン処理、思考上の限定合理性、思考のバイアス 【事前学習】対人認知におけるステレオタイプを調べ、それがどのように差別につながるのか考察する。(2時間) 【事後学習】利用可能性ヒューリスティクスと係留ヒューリスティクスについて実験的に検討する。(2時間) |
第15回 | 総括 -人間の知能モデルと人工知能(AI)、ヒューマンエラーの心理学 【事前学習】「4枚カード問題」を解き、思考上の特徴について検討する。(1時間) 【事後学習】全15回の授業を通して学習した内容を総括し、人間と人工知能の差異を考える。(3時間) |
その他
教科書 |
鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃・河内十郎(編) 『心理学』 東京大学出版会 2020年 第5版補訂版
講義の中で直接的に使用することはないが、心理学の自主学習に最適の1冊である。購入については各自で判断すること。
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参考書 |
梅本堯夫・大山正(編) 『心理学への招待-こころの科学を知る(改訂版)』 新心理学ライブラリ サイエンス社 2014年
和田万紀(編) 『教育心理学』 Next教科書シリーズ 弘文堂 2014年
藤田主一・齋藤雅英・宇部弘子(編) 『新 発達と教育の心理学』 福村出版 2013年
V.S.ラマチャンドラン・S.ブレイクスリー(著)、山下篤子(訳) 『脳のなかの幽霊』 角川書店 1999年
大山正(著) 『色彩心理学入門-ニュートンとゲーテの流れを追って』 中公新書 中央公論新社 1994年
C.チャブリス・D.シモンズ(著)、木村博江(訳) 『錯覚の科学』 文芸春秋 2011年
その他、授業時に適宜紹介する。
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成績評価の方法 及び基準 |
毎回授業後の小テスト・小課題(計65%)、総括テスト(約20%)、錯視実験レポート(約15%)による総合評価とする。 小テストや各種課題に関する連絡、課題の提出は、すべてCSTポータルIIを通して行われる。 総括テストは、定期試験実施期間にCSTポータルIIによって実施されるため、定期試験や平常試験と異なり、追試験の対象とはならない。 |
質問への対応 | CSTポータルIIのQ&A機能とメールにて応じる。 いずれの場合も、本文中に、科目名、学科、学生番号、氏名を必ず記載すること。 なお、科目担当者の都合により、返信が数日遅れる場合がある。 |
研究室又は 連絡先 |
メールアドレス:ito.yoshie20(at)nihon-u.ac.jp 送信する際に、(at)部分を@に変換すること。 |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
人間の心や行動に興味を持ち、積極的に授業に臨んでほしい。 授業内容をノートにとったり、与えられた課題を指示通りにこなしたりするだけでは、真の「学び」にもアクティブな学習にもならない。心理学的研究によって明らかにされた諸理論・現象を追試・追体験しながら具体的に把握することを心がけ、自分自身について、そして、人間について理解を深めてほしい。 なお、授業で配信される資料はすべて、当該科目の受講目的に利用が限定され、授業動画の撮影や録音録画、二次利用、SNSへの転載や公開などの行為は、いずれも禁止されている。 新型コロナウイルスの影響で、さまざまな活動に支障をきたし、不安やストレスを感じることもあるだろうが、通学であっても、在宅学習であっても、学習習慣をなるべく崩さず、規則正しい生活や食事、適度な運動を心がけ、また、心身をリラックスさせる時間を作りながら日常を過ごしてほしい。 身体的・精神的健康に十分留意してほしい。 (本シラバスの最終更新日2021/03/18) |