2021年 理工学部 シラバス - 教養教育・外国語・保健体育・共通基礎
設置情報
科目名 | 感性芸術学 | ||
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設置学科 | 一般教育 | 学年 | 2年 |
担当者 | 奥波 一秀 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 月曜1 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | U11G |
クラス | 2年生は、 土木工学科・建築学科・物質応用化学科・物理学科のみ。 3年生以上は学科による履修制限はない。 |
概要
学修到達目標 | 文化・芸術概念の多用な意味、文化現象としての芸術の問題について理解を広め・深めるとともに、文化を超えてコミュニケートすることの必要性・困難、面白さについて考えることができる。芸術、民俗学、歴史学、社会学、政治学、経済学等、インターディプナリーな「視点」のとりかたができるようになる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
オンデマンド型授業。 プリント・視覚教材等を適宜利用しながら講義を行う。毎回講義終了後にレスポンスカードを書いてもらい、そこで出された疑問・要望等を(次の)講義にフィードバックさせていく。受講者の問題意識や講義の進度に合わせて、授業計画に一部変更が生じる場合もある。 |
履修条件 | 環境ライフサブメジャー・コース設置科目。中学程度の日本史・世界史の知識が望ましい。 |
授業計画
第1回 | ガイダンス:本科目「感性芸術学」の目標・具体的な問いと探究方法・他の教養教育科目との関係・次回までの課題について 【事前学習】この科目のシラバスを事前に熟読しておくことはもちろん、教養教育科目のシラバスをよく読んだうえで、「文化とはそもそもなにか」という問いについて、あらかじめ自分なりに考えておくこと。(120分) 【事後学習】 授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
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第2回 | 「文化」概念の歴史:culture/文化という概念の意味とその問題系について、ラテン語からの語源や、日本語のニュアンスにいたるまで、簡潔に概説する。 【事前学習】「文化」に関する一般的なイメージ・言説を調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第3回 | 日本人とはなにか?:文化・芸術問題への通路として、「日本人」の定義を考えてみる。「日本人」のノーベル賞受賞者数の問題の問題など。 【事前学習】「日本人」とはどういう人か、自分の意見をまとめておく。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第4回 | 文化・芸術と民族の関係:民族という観点から、民族対立の問題まで射程にいれて、それと文化・芸術とのかかわりを考察する。在日外国人の問題。 【事前学習】「民族」についての一般的なイメージ・言説を調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第5回 | 文化・芸術と政治の関係:政治と文化とが、どのようにリンクさせられてきたか、その問題性はどのような点にあるか、考察する。 【事前学習】「文化・芸術と政治」の関係に関する一般的なイメージ・言説を調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第6回 | 同上の事例考察(1):国宝制度の成立とその意味を、古社寺保存法の経緯等から理解する。日本の固有な美術の価値を確信したフェノロサ、その功績と限界等について考察する。 【事前学習】アーネスト・フェノロサについて大まかに調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第7回 | 同上の事例考察(2):韓国での国宝番号再指定問題に即して、ナショナリズムと文化の問題を考える。南大門は国宝番号1としてふさわしくない、とは、どういう意味・理由か、日本の場合はどうかなど、具体的に考えていく。 【事前学習】「ナショナリズム」という概念について大まかに調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第8回 | 同上の事例考察(3):文化・芸術遺産の返還問題について、ベルリン博物館島の事例に即して、理解する。イギリス、フランスほどではないにせよ、ドイツ、そして日本は、宗主国だった過去に「収集」した文化・芸術遺産等の返還要求をうける立場にある。これが、どういう経緯からきているか、概説する。 【事前学習】予習:文化芸術遺産の返還問題について大まかに調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第9回 | 国民国家と文化・芸術:近代「国民国家」において「文化・芸術」概念がどのような機能を果たしてきたか、果たしているか。とくに日本の問題について考察する。文明に対する文化というドイツの主張様式に似たしかたで、日本が自身の「精神的価値」等を位置づけ、主張していく、その理論的内容を解説する。 【事前学習】「文化」と「文明」という対義語についてのみずからのイメージ、理解をまとめる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第10回 | 同上の事例研究(1):日本の祭りの多様性から、明治以前の日本の文化実態を理解する。「日本文化」という仕方で総括できるものは、どのていどあるか? 国内の各地にある祭りの様子をみて、日本文化内の多様性・差異について、気づいてもらう。 【事前学習】地元の(or自分の知っている)祭りについて調べ、祭りの社会的機能について考える。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第11回 | 同上の事例研究(2):近代日本における「異文化」破壊と「固有文化」の創出を廃仏毀釈の事例に即して考察する。日本における「伝統」の実態というものを、とくに江戸から明治への転換期の事例に即して、知ってもらう。 【事前学習】地元の(or自分の知っている)神社について、廃仏毀釈について調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第12回 | 同上の事例研究(3)民族あるいは「文化・芸術」の可能性とは、どういうものでありうるか。柳宗悦の民藝運動に即して考察する。民族ごとの「美」というものを柳は措定し、朝鮮・沖縄その他、周縁的とされた文化・芸術を擁護しようとした。このことの意義と限界を考察する。 【事前学習】柳宗悦について大まかに調べ、民族と美(芸術・文化)についての柳の考え方を調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第13回 | 同上の事例研究(4)政治と文化・芸術のかかわりのなかで、どういう振る舞いがありうるか。柳宗悦の朝鮮へのかかわりに即して考察する。光化門事件など、朝鮮への柳のかかわりかたは、政治と文化・芸術の難しい関係を考えるうえでの、貴重なテストケースとなっている。このことを解説する。 【事前学習】朝鮮併合、3.1.独立運動、光化門事件について大まかに調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第14回 | 同上の事例研究(5)戦後日本の「文化国家」という理念を再検討する。「文化・芸術」という概念が今日の日本において、いまだ保持している「ポジティブ」な意味、そこには過剰・過度なものはないだろうか。「文化・芸術」概念の歴史そのものも踏まえつつ、再検討する。 【事前学習】「文化国家」としての再生という、戦後日本の理念についてあらかじめ調べる。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
第15回 | まとめ:14回の講義において触れた、具体的事例をふりかえりつつ、「文化・芸術」という言葉の用法、その機能の問題点等について、再確認し、講義全体の総括とする。 【事前学習】これまでの講義において出てきた諸問題に関して自らの考察を深める。(120分) 【事後学習】授業後、図書館に足を運び、授業内で与えられた課題をさらに考察するために参照すべき文献(複数)を自ら探し、それらを批判的に読みながら、自分の考察を次回までにまとめておくこと。(120分) |
その他
教科書 | |
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参考書 |
奧波一秀 『クナッパーツブッシュ』 みすず書房 2001年
奧波一秀 『フルトヴェングラー』 筑摩書房 2011年
文化・芸術と政治の交錯がもたらす問題の難しさを、音楽家・指揮者の事例に即して理解してほしい。
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成績評価の方法 及び基準 |
平常点・レポート等で評価する。評価のポイントは、最低限の基本的な事実認識をふまえているか、感性芸術学にまつわる諸問題をきちんと消化し・みずから思考しているかどうか、適切に表現できるか、以上の三点である。 ※新型コロナウイルスの影響に伴い変更の可能性がある。変更の場合は授業時に伝達する。 |
質問への対応 | okunami.kazuhide20@nihon-u.ac.jp に連絡・質問すること。 |
研究室又は 連絡先 |
okunami.kazuhide20@nihon-u.ac.jp |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
民俗学、歴史学、社会学、政治学、経済学等、さまざまな学問の視点を頼りに、「文化・芸術」という現象・鋭意の捉え方の難しさ、面白さに迫ってみます。そうした「視点」の持ちかたを少しでもマスターし、世界を広く・深く見る目を養ってください。 |